終身保険は本当に必要?
メリット・デメリット、おすすめしたい人

死亡・高度障害保障が一生涯続く保険商品が終身保険です。終身保険の必要性についてはいろいろな意見があり、個々の状況や将来への考え方によって要不要が分かれます。そのため、終身保険への加入を検討する際はメリットとデメリットを把握し、医療保険やがん保険といった他種の商品と合わせて検討することが大切です。
終身保険に関する基礎知識
しばしば混同されがちな終身保険と定期保険の違いを明確にしましょう。それぞれの特徴を把握することで、自身に合った保険を選びやすくなります。
終身保険の特徴と定期保険との違い
終身保険とは被保険者が生存している限り保障が続く貯蓄性のある生命保険のことです。途中で解約した場合には、支払った保険料の一部が戻ってくる解約返戻金が受取れるため、貯蓄として活用することもできます。一方、定期保険は契約時に保険期間が定められており、その期間内に死亡または高度障害状態になった時に保険金が支払われる点が終身保険との大きな違いになります。また、一般的に定期保険は解約返戻金がない掛け捨て型の保険であることが多いです。
終身保険は死亡時期に関わらず、加入時に定めた保険金が支払われるか、もしくは保障に代えて途中で解約した場合は解約返戻金を受取ることができます。さらに終身保険は保険料の払込みを一生涯払い続ける終身払込タイプと、契約から一定年齢もしくは一定期間に定める有期払込タイプ、そして一度にまとめて保険料を支払う一時払タイプがあります。いずれにしても、定期保険と比べると解約返戻金がある分、保険料の負担は大きくなる傾向にあります。
終身保険 | 定期保険 | |
---|---|---|
保険期間 | 一生涯 | 一定期間 (10年間、20年間、60歳まで等) |
保険料払込期間 | 終身払込タイプ、有期払込タイプ、一時払タイプがある | 多くは保険期間と同じ 短期払いも可能 |
保険料 | 定期保険よりも高くなる傾向 | 終身保険よりも安くなる傾向 |
解約返戻金 | あり | 基本的にない、あってもわずか |
終身保険に加入する目的
終身保険は、万が一自身が死亡した場合に保険金が支払われる保険です。独身者等の場合「資産をのこす必要がない」といった理由で優先順位が低くなることもありますが、加入目的によっては、終身保険は非常に有用な保険といえるでしょう。
その代表的な理由は、終身保険を解約した際に受取ることのできる解約返戻金があることです。終身保険の解約返戻金は使用用途に制限がないため、将来の老後資金として公的年金等の補填としての活用や、子どもの教育資金やライフステージが変わるタイミングに合わせて備えることが多いです。
このように終身保険は、万が一の時に心強い保険ですが、保険料や解約返戻金の金額は商品や各生命保険会社で異なります。そのため終身保険は他の生命保険の商品と同様に加入する目的を明確にする必要があります。
終身保険の種類
終身保険は保険金や解約返戻金の金額・貯蓄性・保険料の運用方法等によって大きく4つに分類されます。
- 低解約返戻金型終身保険
- 積立利率変動型終身保険
- 変額終身保険
- 外貨建終身保険
それぞれの特徴は以下のとおりです。
終身保険の種類 | 特徴 |
---|---|
低解約返戻金型終身保険 |
|
積立利率変動型終身保険 |
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変額終身保険 |
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外貨建終身保険 |
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終身保険に加入するメリット・デメリット
終身保険に加入することで得られるメリットと注意すべきデメリットを3つずつ紹介します。
終身保険に加入するメリット
被保険者が死亡した時に確実に保険金をのこすことができる
終身保険は保障が一生涯続き、何歳で亡くなっても保険金が支払われるため、確実に保険金をのこせる安心感を得ることができます。
遺族は葬儀費用や遺品整理等故人のために経済的支出を負う場合があります。さらに、葬儀の手配や遺品整理等を行う際には、仕事を休む必要がある遺族や親族の収入が一定期間減ることも想定されます。その際、死亡保険金受取人である遺族の経済的負担等を軽くできるのが終身保険の大きな役割だといえます。
ただし、終身保険の検討や保険商品選びで注意するべき点は必要保障額の設定です。終身保険における必要保障額は被保険者が死亡した際に、遺族がどれだけ資金を必要とするかを慎重に考える必要があります。
そして、支払った保険料は解約返戻金や保険金として戻ってくるため、資産形成のひとつとして活用することができます。また、一部の終身保険は支払った保険料総額以上に解約返戻金が支払われる保険商品もあります。そのため、終身保険は守りの資産形成・資産運用ができるといえるのです。
契約者貸付制度を利用できる
契約者貸付とは契約した保険の解約返戻金の一定範囲内で貸付を受けられる制度です。近年はさまざまな経済の事情も踏まえ、「今すぐ現金が必要になる」というケースに対応できる状況かどうかも考慮して資産形成しなければなりません。そのような場合、多くの方はカードローン等を利用します。しかし、契約者貸付制度を活用することで保険を継続したまま貸付を受けることができ、カードローンよりも金利が低く、融資審査もなく現金を用意することができます。
ただし、制度を利用すると、貸付金に利息が発生し、返済義務も生じる点に注意が必要です。かつ、制度利用中に死亡した場合、貸付元金と利息が保険金から相殺され、当初の想定通りに遺族にのこせないということになります。そのため、計画的に制度を利用する必要があります。
死亡保険金には相続税の非課税枠がある
終身保険の死亡保険金には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される基礎控除額の範囲内で相続税の非課税枠があることも終身保険のメリットのひとつです。保険金の受取人が相続人である場合に限り、非課税枠を活用できるケースがあります。死亡保険金の非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」で計算でき、例えば夫の保険金の法定相続人が妻と子どもの計2人である場合、「500万円×2人=1,000万円」までなら保険金に相続税がかかりません。そのため、相続対策で加入するケースもあります。
※2022年10月現在の税制に基づき作成終身保険に加入するデメリット
定期保険と比べて保険料が高くなりやすい
前述のとおり、終身保険は掛け捨てタイプの定期保険よりも、保険料が高い傾向があります。いくら解約返戻金があるとしても、特に現役世代では保険料が生活や家計を圧迫するリスクも考慮する必要があるでしょう。
更新がないため見直し機会が少ない
終身保険は長期間かけ続ける保険で、加入年齢に応じた保険料が算出されます。仮に保険料が支払えない等の理由で一度解約し、同じ保障内容で加入し直したとしても、保険料は最初に加入した時よりも高くなってしまいます。さらに、健康状態によっては加入が出来ない場合もあります。また、一般的に結婚や出産、住居の購入等によって、欲しい保障や必要な保障が変化します。そのため、基本の保障や特約の付加等ができる保険商品を選ぶ等の対策も重要です。
解約返戻金が払込保険料の総額を下回る可能性がある
終身保険を途中で解約した場合、解約返戻金が払込保険料の総額を下回ることがあります。そのため、預金と比べて手元に残る金額が少なくなってしまうこともあります。契約した保険よりも安くて自身に合う保険商品があるケースも考えられるので、加入する際はファイナンシャルプランナー等の専門家のアドバイスを参考にすることをおすすめします。
終身保険の加入をおすすめしたい人
老後資金を確実に貯めたい人や死亡した際に確実に財産をのこしたい人、一生涯の保障と安心を得たい人は、終身保険の加入を検討する価値が高いと考えられます。
老後の資金を着実に貯めていきたい人
終身保険は払込総額が解約返戻金を上回る時期までは、資産形成の効果を得られないため、解約して現金化しようという気持ちになりません。そのため預貯金と比べると無計画にお金を使ってしまうリスクが低いため、貯蓄が苦手という人であっても老後の資金を貯めやすいという特徴があります。
自身が亡くなった後のために確実に財産をのこしたい人
終身保険に入っていれば、もしもの時に大切な人に確実に財産をのこせます。自身がいなくなっても一定の生活費の保障を得られることは、遺族にとって心の支えにもつながるでしょう。
一生涯の保障を受取りたい人
終身保険は払込期間を設定でき、60歳や65歳等に設定することでそれ以上の年齢になればお金を払うことなく一生涯保障を得ることができます。老後の生活の負担を軽くしつつ、一生涯、死亡・高度障害保障を受け続けられるのは老後の安心につながるでしょう。
終身保険の加入は若く健康なうちに
終身保険は医療保険と同じく加入年齢が若いほど、保険料が安くなります。さらに一部の特約や保障の上限額を超えない限り、追加して加入や付加ができるのも魅力です。収入等に余裕ができた時に、少しずつ保障内容を充実させていくのもおすすめです。終身保険は健康なうちに加入しておくのもひとつのリスクヘッジだといえます。健康や将来に不安を感じたタイミングでは、加入できないケースや保障が限られてしまうこともあります。終身保険に興味がある人は若く健康なうちに終身保険に加入することで、将来への備えができるのではないでしょうか。