学資保険とは?メリット・デメリットや仕組みについて解説

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学資保険は、主に子どもの教育資金を準備するための生命保険です。子どもの誕生を機に、学資保険への加入を検討する人は多いのではないでしょうか。一方で、「学資保険に入らなくても計画的に貯金をしていれば大丈夫なのでは?」と考える人もいるかもしれません。

ここでは、学資保険のメリット・デメリットや必要性、学資保険選びのポイントの他、学資保険以外の保険で教育資金を準備する方法についても解説します。

学資保険とは子どもの教育資金を準備するための保険

学資保険とは、主に子どもの教育資金の準備を目的とした、貯蓄性のある保険のことです。基本的に保護者が契約者となって加入し、子どもの進学のタイミング等、契約時に定めた時期に、祝金や満期保険金を受取ることができます。多くの保険商品では、契約者である保護者が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった場合、以後の保険料を払込まなくても満期保険金等を受取れる、保険料払込免除特約があります。

学資保険の祝金については、以下の記事をご覧ください。
学資保険の祝金とは?かかる税金や据え置き制度について解説

子どもの教育資金はいくら必要?

将来の子どもの教育資金を準備するには、まず必要な金額の目安を知っておくことが大切です。子どもの教育費がかかるタイミングは、幼稚園から小学校、中学校、高校、大学までといくつかありますが、進学する学校が私立か公立かによっても金額が大きく変わります。また、教育費のなかでも多額の費用がかかるのが大学です。

文部科学省の調査による幼稚園から高校までにかかる費用と、株式会社日本政策金融公庫の調査による大学4年間でかかる費用は、それぞれ以下の表のとおりです。これらの表から、「幼稚園から高校までは公立、大学は私立文系で自宅通学」というケースを想定して費用を計算すると、教育費の総額は約1,268万円になります。

■幼稚園から高校までにかかる費用の目安(単位:万円)

区分幼稚園小学校中学校高校(全日制)
公立私立公立私立公立私立公立私立
学習費年額1731351675414451105
合計(小学校6年・他は3年)50932121,000162431154316

※千円以下四捨五入
出典:「令和3年度子供の学習費調査」(文部科学省)P.1
https://www.mext.go.jp/content/20221220-mxt_chousa01-000026656_1a.pdf)を基に作成

■大学4年間でかかる費用の目安(単位:万円)

区分初年度2年目以降4年間合計
国公立自宅171104481
自宅外305199903
私立文系自宅234152690
自宅外3682481,112
理系自宅272183822
自宅外4072791,244

※千円以下四捨五入
※受験でかかる費用や学校納付金、その他、教科書代や交通費、学生の生活費等も含まれる
出典:「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」(株式会社日本政策金融公庫)P.5,6,10,11
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_r03.pdf)を基に作成

教育資金の準備については、以下の記事をご覧ください。
教育資金の貯め方は?大学までの資金の平均額と貯めるポイントを解説

学資保険のメリット

学資保険には、以下のようなメリットがあります。主な加入メリットについてご紹介します。

<学資保険のメリット>

  • 教育資金を計画的に準備できる
  • 契約者に万が一のことがあっても安心
  • 生命保険料控除が受けられる

教育資金を計画的に準備できる

学資保険の大きなメリットは、計画的に教育資金を準備できることです。学資保険は、契約時に祝金や満期保険金の受取額を決め、毎月所定の保険料を払込んでいくのが一般的です。預貯金だけで教育資金を用意しようとすると、定期的に継続して貯めることが難しくなったり、貯めたお金を他の用途に使ってしまったりすることがあるかもしれません。しかし、学資保険なら保険料を払込むことで自動的に積立ができるので、計画的に教育資金を準備できます。

学資保険と貯金との比較については、以下の記事をご覧ください。
学資保険と貯金、教育資金準備に適しているのは?特徴等を解説

契約者に万が一のことがあっても安心

学資保険には、契約者である保護者の万が一に備えながら、教育資金を準備できるというメリットがあります。多くの学資保険では、契約者が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった時、以後の保険料の払込みが免除される保険料払込免除特約があります。定期的に預貯金で教育資金を積み立てていた場合、保護者に万が一のことがあると、継続して貯蓄ができるとは限りません。教育資金の準備と万が一の時の保障を両立できるのは、学資保険の大きな特徴です。

生命保険料控除が受けられる

学資保険の保険料は、年末調整や確定申告の際、生命保険料控除の対象になります。教育資金の積立と同時に、税負担を軽減できるというのは大きなメリットといえるでしょう。生命保険料控除を適用すると、払込んだ保険料のうち一定額が課税所得から差し引かれ、所得税や住民税の負担を軽減することができます。

学資保険の年末調整については、以下の記事をご覧ください。
学資保険は年末調整の控除対象でいくら戻る?受取人や申告方法を解説

学資保険のデメリット

学資保険への加入を検討する際には、メリットだけではなく、デメリットについても知っておくことが大切です。学資保険のデメリットには、主に以下が挙げられます。

<学資保険のデメリット>

  • 解約すると元本割れのリスクがある
  • 急な出費等への対応が難しい
  • インフレに弱い

解約すると元本割れのリスクがある

学資保険を途中解約すると、それまで払込んだ保険料の総額よりも解約返戻金が少なくなる「元本割れ」を起こすことがあります。特に、契約して間もなくの早期解約の場合、解約返戻金を受取れないか、受取れたとしてもごくわずかである可能性が高いでしょう。途中解約を避けるために、保険料の金額や払込期間は慎重に検討する必要があります。

学資保険の解約については、以下の記事をご覧ください。
学資保険の途中解約時の注意点は?解約返戻金や手続きについて解説

急な出費等への対応が難しい

学資保険は、預貯金に比べて急な出費等への対応には向いていないといえるでしょう。預貯金の場合はすぐに引き出すことができますが、学資保険の場合は解約の手続きが必要です。また、学資保険を途中で解約すると、解約返戻金が払込保険料よりも少なくなる可能性もあります。学資保険で積み立てているお金は満期を迎えるまで使えないものとして考えておき、急な出費等に備えるためには預貯金を蓄えておくのもひとつの方法です。

インフレに弱い

契約時に満期保険金の金額を設定する学資保険は、インフレに弱いというデメリットがあります。インフレとは、物価の上昇によって相対的にお金の価値が下がることです。学資保険は長期間にわたって保険料を払込むケースが多いため、将来インフレが起こると、受取れる祝金や満期保険金の価値が、契約時の想定よりも低くなってしまう可能性があります。

学資保険の返戻率を上げる方法

学資保険で将来受取れる金額は、返戻率によって決まります。返戻率とは、払込んだ保険料の総額に対して、受取れる金額がどれくらいになるのか、という割合を示した数字です。一般的に、学資保険の返戻率は保険商品ごとに設定されており、返戻率が高いほど貯蓄性が高いということになります。

学資保険に加入するなら、できるだけ返戻率を高めたいと考える人が大半でしょう。学資保険の返戻率を上げるには、主に次のような方法があります。

1. 満期保険金の受取りまでの期間を長く設定する

学資保険の返戻率を上げたいなら、満期保険金の受取りまでの期間を長く設定するという方法があります。保険会社は、契約者が払込んだ保険料の一部を運用し、運用益を得ています。満期までの期間が長ければ、その分保険料を長く運用でき、それに伴って運用益も増加するでしょう。学資保険の返戻率には運用益が反映されるため、一般的には、満期までの期間が長ければ長いほど返戻率がアップします。

2. 保険料を早く払終える

保険料を早く払終えるのも、学資保険の返戻率を上げる方法のひとつです。保険料の払込期間を短くすると、その分運用できる期間が延びるので、返戻率アップにつながります。例えば、保険期間の満了まで保険料を払込む全期払よりも、10年間等の一定期間で保険料を払終える有期払のほうが、返戻率は高くなります。ただし、払込期間が短くなると1回あたりの保険料の金額が増えるので、無理のない範囲で設定しましょう。

3. 祝金等、途中でお金を受取らない

途中で祝金等を受取らないプランにすることで、返戻率を上げられます。祝金等がある学資保険のプランよりも、満期保険金を一括で受取る学資保険のプランのほうが、運用資金を確保できます。その分、保険料を抑えられるため、返戻率が高くなるのです。例えば、「公立の中学や高校への進学を予定している」「大学以外の教育資金は預貯金でまかなえそう」といった場合は、祝金がなくてもそれほど問題はないかもしれません。そのような場合は、祝金等を受取らないプランを選択し、返戻率アップを狙うのもよいでしょう。

4. 保険料をまとめて払込む

学資保険の保険料の払込方法には、一時払(契約時に保険料を1回で払込む)や年払、半年払、月払等がありますが、一般的には、一度に払込む保険料の金額が高いほど返戻率が上がります。つまり、返戻率の高いほうから、一時払、年払、半年払、月払、という順番です。一時払は大きな負担になるかもしれませんが、年払や半年払等、無理のない範囲でまとめて払込むことができるなら、返戻率を上げる方法のひとつとして検討してみてもよいでしょう。なお、払込方法の設定は保険会社によって異なる場合があるため、事前に確認が必要です。

学資保険の返戻率については、以下の記事をご覧ください。
学資保険の返戻率とは?計算方法や返戻率を高くするポイントを解説

学資保険の保険料については、以下の記事をご覧ください。
学資保険の保険料の月額平均はいくら?相場や教育資金の貯め方を解説

学資保険と税金

学資保険の祝金や満期保険金を受取る際、「所得税」または「贈与税」といった税金がかかる場合があります。課税される税金の種類は、保険料の負担者と受取人が誰なのか、祝金や満期保険金をどのような方法で受取るのかによって変わります。

学資保険で受取るお金と税金の関係を、以下の表にまとめました。どのようなケースでどういった種類の税金がかかるのかを確認しておきましょう。

■保険料負担者や受取り方によって変わる税金の種類

保険料負担者と受取人の関係受取り方税金の種類
保険料負担者と受取人が同じ一括受取り所得税(一時所得)
年金形式所得税(雑所得)
保険料負担者と受取人が異なる一括受取り、年金形式贈与税

学資保険の税金については、以下の記事をご覧ください。
学資保険の祝金や満期保険金に税金はかかる?契約ごとの違いを解説

学資保険が必要なケース

学資保険が必要かどうかは、それぞれの家庭の状況や考え方によって異なります。学資保険にはメリットとデメリットがあるため、それらを踏まえた上で、自分や家族にとって必要かどうかを検討することが大切です。例えば、次のようなケースでは、学資保険に加入する必要性が高いといえるでしょう。

万が一に備えつつ教育資金を準備したい場合

多くの学資保険の特徴は、契約者である保護者に万が一のことがあっても、子どもの教育資金をしっかり準備できることです。万が一の時の保障を確保しつつ教育資金を積み立てたいと考えるなら、学資保険はおすすめの手段といえます。

貯蓄が苦手な場合

学資保険は毎月保険料を払込むことによって、自動的に教育資金を貯められます。また、払込んだ保険料は、預貯金のように自由に引き出して使うことはできません。「コツコツ貯めるのが苦手」「手元にお金があると、つい使ってしまいがち」という場合でも、学資保険なら計画的に教育資金を準備できます。

学資保険が不要なケース

子どもが生まれたからといって、必ず学資保険に加入しなければいけないわけではありません。次のようなケースでは、学資保険の必要性はそれほど高くないと考えられます。

計画的に教育資金が準備できる場合

自動的な積立の仕組みがなくても、計画的に教育資金を準備できるなら、学資保険に加入しなくてもそれほど問題はないかもしれません。学資保険には保障面のメリットがありますが、預貯金には必要な時にいつでも引き出せるというメリットがあります。両者を比較し、自分にとってよりメリットの大きいほうを選ぶとよいでしょう。

十分な資金が見込める、またはすでにある場合

資産運用が得意で、学資保険の返戻率以上に資産を増やせる見込みがあるなら、学資保険に加入する必要性は低いでしょう。また、すでに教育資金として十分準備できている場合も、あらためて学資保険を検討しなくてもいいかもしれません。

学資保険を選ぶ際のポイント

学資保険を選ぶ際には、返戻率や加入の時期、満期の時期、保険料の払込期間といった確認するポイントがあります。それぞれどのような点を意識すればいいのか、順番に見ていきましょう。

返戻率

学資保険に加入する際には、まず返戻率に注目してみましょう。返戻率が100%であれば、払込んだ保険料と、受取れる祝金や満期保険金がちょうど同額ということです。また、返戻率が100%を超える場合は、払込んだ保険料よりも多くの金額を受取れます。ただし、返戻率を重視するあまり、保険料の負担が大きくなりすぎないように注意が必要です。

加入の時期

学資保険には、加入できる子どもの年齢に制限があるため、加入の時期を事前に確認することをおすすめします。年齢制限は保険商品によっても異なりますが、多くは出生前140日前から7歳くらいまでです。また、学資保険の保険料は、加入時の契約者や子どもの年齢が低いほど金額を抑えることができます。月々の保険料負担を少なくするには、できるだけ早めに加入を検討したほうがよいでしょう。

学資保険の加入の時期については、以下の記事をご覧ください。
学資保険はいつから何歳まで入れる?適した加入タイミングを解説

満期の時期

学資保険の満期の時期は保険商品によって異なり、契約時に選択できる場合もあります。一般的には、大学入学時の費用をカバーする17~18歳満期や、大学在学中の4年間に必要なお金を用意する21~22歳満期に設定するケースが多いでしょう。教育資金が必要な時期がいつになるかを考え、その前に満期保険金を受取れるようなプランを選ぶことが大切です。

保険料の払込期間

保険会社や保険商品によっては、学資保険の保険料の払込期間を希望に合わせて選ぶことが可能です。払込期間が短いほど、学資保険の返戻率は高くなります。ただし、払込期間が短いと1回に払込む保険料が高額になりますので、返戻率と家計のバランスを考慮した上で、無理のない払込期間を設定しましょう。

学資保険以外の保険で教育資金を準備する方法

子どもの教育資金の準備に適した保険は、学資保険以外にもいくつかあります。学資保険とあわせて、次のような保険も検討してみましょう。

低解約返戻金型終身保険

低解約返戻金型終身保険は、保険料払込期間中の解約返戻金を抑える代わりに、保険料が割安になっている終身保険です。低解約返戻金型終身保険のなかには、保険料の払込期間終了後に解約すると、返戻率が100%を超える場合も少なくありません。払込終了時期を子どもの進学等のタイミングに合わせれば、解約返戻金を教育資金にあてることが可能です。また、保障は一生涯続くため、もしも払込期間中に万が一のことが起きても、保険金を教育資金としてのこすことができます。

低解約返戻金型終身保険については、以下の記事をご覧ください。
低解約返戻金型の終身保険とは?メリット・デメリットを解説

個人年金保険

個人年金保険は、所定の年齢まで保険料を払込み、契約時に定めた受取開始時期になったら、一定期間または終身にわたって年金を受取ることができます。個人年金保険の本来の目的は、老後の生活資金に備えることなので、年金の受取りは60歳以降が一般的ですが、保険商品によっては受取開始時期を柔軟に設定できる場合があります。

個人年金保険は生命保険のなかでも貯蓄性が高い保険です。受取開始時期を子どもの進学時等に合わせることで教育資金として活用でき、年金を受取る前に万が一のことが起こった場合は、払込んだ保険料相当額が保険金として支払われることが一般的です。

個人年金保険については、以下の記事をご覧ください。
個人年金保険とは?メリット・デメリットや必要性をわかりやすく解説

万が一に備えつつ子どもの教育資金を準備するなら、学資保険がおすすめ

学資保険に加入すると、将来必要になる子どもの教育資金を計画的に準備することができます。また、契約者である保護者に万が一のことがあった場合は、その後の保険料の払込みが免除される保険料払込免除特約がつくことが多いため、のこされた家族にとっても安心でしょう。

子どもの誕生は、学資保険をはじめとした保険の見直しに適したタイミングでもあります。自分や家族に合った保険選びを検討したい場合は、ぜひ「ほけんの窓口」へご相談ください。

学資保険についてよくある質問

学資保険について、よく聞かれる疑問をまとめました。それぞれの質問について解説していますので、参考にしてください。

学資保険はどのような保険ですか?
学資保険とは、主に子どもの教育資金の準備を目的とした、貯蓄性のある保険のことです。基本的に保護者が契約者となって加入し、子どもの進学のタイミング等、契約時に定めた時期に、祝金や満期保険金を受取れます。多くの学資保険には、保険料払込免除特約があり、契約者である保護者が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった場合、以後の払込みが免除されます。
学資保険のメリットは何ですか?
学資保険の大きなメリットは、契約者の万が一に備えつつ、教育資金を計画的に準備できることです。学資保険は毎月所定の保険料を払込むことで、計画的に教育資金を準備することができます。また、多くの学資保険には、保険料払込免除特約があり、契約者が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった時、以後の保険料の払込みが免除されます。さらに、学資保険の保険料が生命保険料控除の対象になることもメリットです。
学資保険の祝金や満期保険金を受取る際、税金はかかりますか?
学資保険の祝金や満期保険金を受取る際、所得税または贈与税の対象になり、受取額によっては税金がかかります。保険料の負担者と受取人が同一人物の場合は、所得税の課税対象となりますが、一括または年金形式といった受取り方によって、計算方法が異なることに注意が必要です。また、保険料の負担者と受取人が異なる場合は、贈与税の課税対象となります。
学資保険が不要なのはどのような場合ですか?
計画的に教育資金が準備できる場合や、十分な資金が見込める、またはすでにある場合は、学資保険の必要性は低いといえます。学資保険は、万が一に備えつつ教育資金を準備したい場合や、貯蓄が苦手な場合にはおすすめですが、計画的に教育資金を準備できたり、資産運用が得意だったり、すでに教育資金として十分準備できていたりする場合は、無理に加入を検討する必要はないでしょう。

監修者プロフィール

黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。FPサテライト株式会社所属FP。

黒川 一美
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