公務員に保険はいらない?おすすめの保険と選び方を解説
公務員は会社員等に比べて社会保障が充実しているため、「民間の保険は必要ない」といわれることがあります。しかし、本当に公務員に保険は不要なのでしょうか。公務員であっても、必ずしも保険がいらないとは言い切れません。なぜなら、手厚い社会保障があっても、それだけではカバーできないリスクがあるからです。
ここでは、共済組合の特徴や公務員に保険は必要ないといわれる理由、公務員が保険で備えておきたいリスク、おすすめの保険の選び方等について解説します。
公務員が加入する共済組合とは
日本は国民皆保険制度を採用しており、すべての人が公的医療保険に加入しています。会社員が加入するのは協会けんぽや健康保険組合ですが、公務員が加入するのは共済組合です。
共済組合は、組合員がお互いに助け合い、相互の生活の安定と福祉の向上を図ることを目的とした社会保険組合です。国家公務員、地方公務員、私立学校教職員それぞれの所属する団体ごとに、共済組合の制度があります。一般的に共済組合は、会社員が加入する健康保険に比べて保険料が安い傾向にあるのが特徴です。
共済組合には、「短期給付」「長期給付」「福祉」という3つの事業があります。そのうち代表的なものが「短期給付」と「長期給付」で、それぞれ以下のような保障が受けられます。
短期給付が公的医療保険、長期給付が公的年金制度にあたると考えるとイメージしやすいでしょう。
■共済組合の主な保障
名称 | 保障内容 |
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短期給付 |
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長期給付 |
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公務員に保険は必要ないといわれる理由
会社員や自営業の人は、公的な社会保障に加えて民間の保険にも加入しているケースが多くあります。しかし、公務員の場合、「保険は必要ない」といわれることが多くあるのはなぜでしょうか。主に以下のような理由が挙げられます。
病気やケガによる休職時の保障が手厚い
公務員に保険が不要といわれる理由のひとつが、病気やケガで休職した際の保障が手厚いことです。病気やケガで働けなくなった時の収入減少リスクが会社員に比べて低いため、保険は必要ないと考える人もいます。
公務員が病気やケガで休職すると、休暇取得から90日間は「病気休暇」の扱いとなり、給与の全額が支給されます。また、90日を超えて復職できなかったとしても、1年間は給与の80%を受取ることが可能です。休職2年目以降は無給ですが、会社員と同様に「傷病手当金」の給付を受けられます。
医療費が高額になった時の保障が手厚い
公務員は医療費が高額になった時の保障も充実しているため、保険が必要ないと思われることも少なくありません。まず、1か月に支払った医療費が自己負担限度額を超えた際には、他の公的医療保険同様に「高額療養費制度」が適用され、超えた分の金額が払戻されます。
さらに、共済組合には、高額療養費制度とは別に「一部負担金払戻金」という附加給付があります。これは、医療機関ごとの1か月あたりの合計額が所定の上限額を超えた時、超えた分が一部負担金払戻金として給付される制度です。医療費が高額になった場合の経済的な負担も、会社員等に比べて軽く済むといえるでしょう。
団体保険に加入できる
公務員に保険が必要ないといわれる理由として、団体保険に加入できることも挙げられます。団体保険とは、共済組合や企業等の団体が契約者となり、団体に所属する人を被保険者とする保険です。所属する団体によって保障内容は異なりますが、団体割引が適用されるため、個人で保険に加入するより保険料が割安という特徴があります。公務員は団体保険に加入しているケースが多いため、「改めて民間の保険に加入する必要はない」といわれることがあります。
公務員が保険で備えたいリスク
公務員は、会社員等に比べて社会保障が充実していますが、すべてのリスクをカバーできるわけではありません。特に、以下のようなリスクが考えられます。
保険適用外の医療費負担
公務員でも、保険適用外の医療費負担に備える必要があります。病気やケガになった時には、公的医療保険が適用されない費用がかかることも少なくありません。例えば、入院時の差額ベッド代や食事代、日用品の費用、通院にかかる交通費、先進医療や自由診療にかかる費用等は、公的医療保険の適用外です。
特に、先進医療の技術料は非常に高額で、数百万円の自己負担額が発生することも珍しくありません。保険適用外の費用に関しては、高額療養費制度や一部負担金払戻金は対象外です。
退職後の医療費負担
公務員が保険で備えておきたいリスクは、退職後の医療費負担も挙げられます。公務員の場合、在職中の医療保障は手厚いものの、同じ保障が一生涯にわたって受けられるわけではありません。定年退職後は一部負担金払戻金もなくなり、現役時代よりも保障が手薄になります。さらに、団体保険に加入していた場合も退職後は基本的に脱退となります。継続できたとしても、保険金額や保障の選択肢は減少するケースが一般的です。
死亡リスク
公務員であっても、死亡リスクに備える必要があります。公務員の場合、万が一のことがあった時には埋葬料と、その人に生計を維持されていた家族がいれば遺族年金(遺族厚生年金)が支給されます。ただし、支給される金額だけでは、葬儀費用やのこされた家族の生活費をまかなうことが難しいかもしれません。
特に、小さな子ども等、養う家族がいる場合、自分にもしものことがあると、のこされた家族の生活に大きな影響を及ぼしてしまいます。
老後資金の不足
公務員のなかには、老後資金に不安がある人もいるかもしれません。2015年10月から被用者年金制度の一元化により、共済年金制度は厚生年金制度に統一され、従来よりも受取りの条件が厳しくなりました。ゆとりある老後に備えたい場合は、不足する老後資金を自分で準備する必要があります。
公務員におすすめの保険
公務員にはどのような保険がおすすめなのでしょうか。保険ごとに特徴を解説します。
医療保険
医療保険は、公的医療保険だけではカバーしきれない医療費等の費用を補うための保険です。病気やケガで入院したり、所定の手術や治療を受けたりした場合に給付金が受取れます。公務員は、病気やケガのリスクが高まる定年退職後の保障が手薄になりがちです。退職後の医療費の負担をカバーしたい場合は、保障が一生涯続く終身医療保険を選択するのもよいでしょう。
医療保険については、以下の記事をご覧ください。
医療保険の種類や公的医療保険と民間の医療保険の違いを解説
がん保険
がん保険は、がんの保障に特化した保険です。がんと診断された時や、がんによる入院・手術をした時、がんの通院治療を受けた時等に給付金が受取れます。がんは再発や転移等のリスクがあり、治療が長期化しやすい病気です。また、公的医療保険適用外の治療を選択すると、医療費が高額になることもあります。がん治療に対する保障を手厚くしたい場合は、がん保険への加入がおすすめです。
がん保険については、以下の記事をご覧ください。
がん保険とは?医療保険との違いや選び方、加入時の注意点を解説
死亡保険
死亡保険は、被保険者が死亡または保険会社所定の高度障害状態となった場合に保険金が支払われる保険です。共済組合の保障は一生涯ではありません。そのため、公務員が死亡保険への加入を検討するなら、生涯にわたって保障が続く終身保険がおすすめです。
終身保険に加入すれば、いつ万が一のことが起こっても、確実に家族に死亡保険金をのこすことができます。また、解約すれば解約返戻金が受取れるため、老後の備えとしても活用可能です。
死亡保険については、以下の記事をご覧ください。
死亡保険とは?終身と定期の違いと自分にあった選び方を解説
個人年金保険
個人年金保険は、国民年金や厚生年金等の公的年金を補う目的で個人が任意で加入する私的年金のひとつです。公的年金や退職金だけでは老後資金が不足しそうな場合、個人年金保険に加入することで必要な老後資金を補完できます。
共済年金制度が厚生年金制度に統一され、従来よりも受取れる条件が厳しくなったことから、老後資金の準備として個人年金保険を検討するのもひとつの方法です。
個人年金保険については、以下の記事をご覧ください。
個人年金保険とは?メリット・デメリットや必要性をわかりやすく解説
公務員が保険を選ぶ際のポイント
公務員が保険の加入を選ぶ際は、2つのポイントがあります。以下のポイントを確認して保険を検討しましょう。
保険加入の目的を明確にする
保険の加入を検討する際には、まず、「何のために保険に加入するのか」という目的を明確にしておくことが重要です。例えば、「医療費の自己負担分に備えたい」「特定の保障を手厚くしたい」「退職後の病気やケガに備えたい」「最低限の保障を確保しながら資金を貯めたい」等、目的によって選ぶべき保険の種類は変わります。
保険にはさまざまな種類やプランがあり、それぞれ一長一短です。あらかじめ、共済組合の保障内容をしっかりと把握して、加入目的を明確にしておけば、自分に合う保険を選びやすくなるでしょう。
保障と保険料のバランスを考慮する
保険を選ぶ際には、保障と保険料のバランスを考えて検討する必要があります。保障内容を手厚くするあまり保険料の負担が大きくなりすぎると、家計に悪影響を及ぼしてしまうかもしれません。保険料は毎月継続して払込むため、無理のない金額を設定することが大切です。
生命保険は、保障機能のみの「掛け捨て型」と保障機能と貯蓄機能をあわせ持つ「貯蓄型」の大きく2種類に分けられます。保険料は、貯蓄型よりも掛け捨て型のほうが割安です。保険に貯蓄性を求めないのであれば、毎月の保険料負担を抑えられる掛け捨て型を選ぶのもよいでしょう。
また、一般的に、保険契約時の年齢が若ければ若いほど、月々の保険料負担が少なくなります。保険料を抑えながら将来のリスクに備えたい場合は、できるだけ若く健康なうちに加入を検討することをおすすめします。
掛け捨て型生命保険については、以下の記事をご覧ください。
掛け捨て型生命保険のメリットと貯蓄型との違いをわかりやすく解説
公務員は共済組合の保障内容を確認した上で保険への加入を検討しよう
公務員が加入する共済組合では、会社員に比べて充実した保障を受けられるため、「民間の保険は必要ない」という意見もあります。しかし、共済組合だけでカバーできないリスクは多々あります。「共済組合だけでは不足するリスクに備えたい」「将来のリスクに手厚い保障を準備したい」という場合は、保険の加入を検討するとよいでしょう。
保険にはさまざまな種類があるため、迷った時には保険の専門家に相談するのがおすすめです。「ほけんの窓口」では、保険の選び方に関する質問や見積もり等が、何度でも無料で相談できます。目的に合わせた保険を検討したい場合は、ぜひ「ほけんの窓口」へご相談ください。
公務員の保険についてよくある質問
公務員の保険について、よく聞かれる疑問をまとめました。それぞれの質問について解説していますので、参考にしてください。
- 公務員が加入する共済組合とは何ですか?
- 共済組合は、組合員がお互いに助け合い、相互の生活の安定と福祉の向上を図ることを目的とした社会保険組合です。国家公務員、地方公務員、私立学校教職員それぞれの所属する団体ごとに共済組合の制度があり、主に「短期給付」「長期給付」の保障があります。また、共済組合は会社員が加入する健康保険に比べて保険料が安い傾向にあります。
- なぜ公務員は保険が不要といわれるのですか?
- 公務員は保険が不要といわれる理由としては、病気やケガで休職した場合の保障や、医療費が高額になった時の保障が手厚いことが挙げられます。また、公務員は、保険料が割安な団体保険に加入している人が多いことも、民間の保険が不要といわれる理由のひとつです。
- 公務員が保険を選ぶ際のポイントは?
- 公務員が保険を選ぶ際には、共済組合の保障内容を把握した上で、保険に加入する目的を明確にすることが大切です。また、保障内容とあわせて、月々払込む保険料の金額に無理がないかを検討する必要があります。
- 公務員にはどのような保険がおすすめですか?
- 公務員におすすめの保険は、備えたいリスクによって異なります。例えば、死亡リスクに備えるなら死亡保険、公的医療保険だけではカバーしきれない医療費等に備えるなら医療保険、がん治療に対する保障を手厚くしたい場合はがん保険を検討するとよいでしょう。また、従来の共済年金が厚生年金に統一されたことで受取りの条件が厳しくなったため、老後資金の準備として個人年金保険もおすすめです。
監修者プロフィール
黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。FPサテライト株式会社所属FP。