貯蓄型保険とは?掛け捨て型保険との違いとメリット・デメリット

最終更新日:

生命保険には、大きく分けて「貯蓄型保険」と「掛け捨て型保険」があります。このうち貯蓄型保険は、死亡や高度障害状態に備えるとともに、解約時の解約返戻金や満期時の満期保険金等のまとまったお金を受取れる保険です。公益財団法人生命保険文化センターが公表している「2022(令和4)年度「生活保障に関する調査」」(2023年3月発行)によると、全国の18~79歳の男女4,844人(個人)のうち、貯蓄型保険を志向する人は62.8%となっています。一方、掛け捨て型保険を志向する人は27.8%となっており、貯蓄型保険のほうが人気だということがわかります。

この記事では、貯蓄型保険の基礎知識や、掛け捨て型保険との違い、貯蓄型保険を検討する上で知っておきたいメリット・デメリットについて解説します。

貯蓄型保険とは、保障と貯蓄の性質をあわせ持った生命保険

貯蓄型保険は保障と貯蓄の性質をあわせ持った保険商品です。貯蓄型保険には死亡保障があり、死亡または保険会社所定の高度障害状態になった時に保険金が支払われます。さらに、払込んだ保険料の一部が積み立てられて運用される仕組みとなっており、解約時や満期時に解約返戻金や満期保険金等のまとまったお金を受取ることができます。万が一に備えながら貯蓄もできる点が、貯蓄型保険の大きな特徴といえるでしょう。

貯蓄型保険の主な種類

貯蓄型保険には、終身保険、養老保険、個人年金保険、学資保険等、さまざまな種類があります。代表的な貯蓄型保険の種類と、それぞれの仕組みを見ていきましょう。

終身保険

終身保険は、保障(保険期間)が一生涯続く生命保険です。被保険者が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった時には、加入時に定めた保険金が支払われます。満期がなく、解約しない限り一生涯保障が続き、途中で解約した場合は一般的に解約返戻金を受取れます。

終身保険は保障が一生涯続きますが、その分、保障内容が同程度の掛け捨て型保険に比べると保険料が割高です。そのため、生活環境やライフステージによっては保険料の負担が大きくなるデメリットもあります。少しでも保険料を抑えつつ、一生涯の保障と貯蓄機能を備えたい場合は、低解約返戻金型終身保険を検討するのもよいでしょう。低解約返戻金型終身保険は、保険料の払込期間中は解約返戻金を低く抑えるという特徴があり、一般的な終身保険よりも保険料が割安になる傾向があります。

■終身保険の仕組み

終身保険の仕組み

養老保険

養老保険は、満期時に被保険者が生存していた場合、満期保険金が受取れる生命保険です。もし、満期を迎える前に被保険者が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった場合は、加入時に定めた保険金が支払われます。満期保険金と死亡保険金は基本的に同じ金額なので、死亡保障と貯蓄を両立することができます。ただし、保険料が終身保険と比べて割高となる点に注意が必要です。

■養老保険の仕組み

終身保険の仕組み

個人年金保険

個人年金保険は、老後の生活資金の準備を目的とした私的年金のひとつです。払込んだ保険料の一部が生命保険会社で運用され、契約時に定めた年齢から、一定期間または終身にわたって年金を受取ることができます。万が一、年金の受取開始日までに被保険者が亡くなった場合は、それまで払込んだ保険料の相当額が死亡保険金として支払われます。保険料の払込期間は契約時に設定しますが、定年退職を迎える65歳や70歳までで設定されることが一般的です。

個人年金保険は、年金の受取り方の違いによって、確定年金、有期年金、終身年金等の種類があります。

■個人年金保険の仕組み

個人年金保険の仕組み

学資保険

学資保険は、主に子どもの教育資金に備えるための生命保険です。子どもの進学のタイミング等、契約時にあらかじめ定めた時期になると、祝金や満期保険金を受取ることができます。満期保険金の受取時期は、子どもが17歳・18歳以降の大学進学時に設定されることが一般的です。また、祝金の受取りは、進学等の教育費が増える時期に設定されることが多いでしょう。

保険商品によっては、万が一、親(契約者)が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった場合は、以後の保険料を払込まなくても満期保険金等を受取れる保険料払込免除特約があります。ただし、契約者である親の既往歴によっては、保険料払込免除特約を付帯できない可能性もあるため確認が必要です。

■学資保険の仕組み

学資保険の仕組み

生命保険の種類については、以下の記事をご覧ください。
生命保険の種類とは?保障内容や加入のメリットをわかりやすく解説

貯蓄型保険と掛け捨て型保険の違い

貯蓄型保険と掛け捨て型保険の大きな違いは、解約返戻金や満期保険金の有無です。貯蓄型保険の特徴は、保障機能と貯蓄機能を兼ね備えていることで、解約時や満期時には払込み金額に応じてまとまったお金が受取れます。一方、掛け捨て型保険は、保険期間が満了すれば保障はなくなり、払込んだ保険料は返ってきません。途中で解約した場合も、解約返戻金はないか、あってもごくわずかです。

■貯蓄型保険と掛け捨て型保険の保険料のイメージ

貯蓄型保険と掛け捨て型保険の保険料のイメージ

その他にも、貯蓄型保険と掛け捨て型保険には、保険期間や月々の保険料等、さまざまな違いがあります。貯蓄型保険と掛け捨て型保険の主な違いを、以下の表にまとめました。

■貯蓄型保険と掛け捨て型保険の違い

貯蓄型保険掛け捨て型保険
保険期間定期または終身定期
保険期間中に不測の事態が起こった場合保険金が支払われる保険金が支払われる
保険期間の途中で解約した場合解約返戻金が受取れる一般的に解約返戻金がない。受取れることがあっても少額
満期になった場合保険商品によって満期保険金を受取れる一般的に満期保険金は受取れない
保険料掛け捨て型保険に比べて割高貯蓄型保険に比べて割安
代表的な保険終身保険、養老保険、個人年金保険、学資保険定期保険、収入保障保険

掛け捨て型生命保険の選び方については、以下の記事をご覧ください。
掛け捨て型生命保険とは?メリット・デメリット、貯蓄型との違い

貯蓄型保険のメリット

貯蓄型保険は、保障と貯蓄の性質をあわせ持った保険商品のため、手厚い保障を得つつ、解約時や満期時にまとまったお金が受取れる保険になっています。貯蓄型保険には、次のようなメリットがあります。

貯蓄や資産形成に役立つ

貯蓄型保険は、満期のあるタイプの商品は満期保険金が受取れるため、貯蓄や資産形成に役立ちます。また、保険期間中に解約したとしても、解約返戻金として払込んだお金の一部が戻り、契約から解約までの期間が長いほど返戻率が高くなります。万が一の場合に備える保険として手厚い保障を受けることができ、同時に将来に向けた貯蓄や資産形成ができる点が、大きなメリットといえるでしょう。満期保険金や解約返戻金を受取るタイミングは商品の選択肢の中から自分で設定できるので、目的に合わせた計画的な資産形成が可能です。

契約者貸付を利用できる

貯蓄型保険のなかには、解約返戻金を担保に保険会社からお金を借りる「契約者貸付」を利用できる商品があります。契約者貸付を利用すれば、保障を継続しながら、解約返戻金の一定の範囲内でお金を借りることが可能です。「一時的にまとまったお金が必要になったが保険は解約したくない」という場合等には便利な制度といえるでしょう。掛け捨て型保険のように解約返戻金がない保険には、このような貸付制度はありません。

ただし、契約者貸付で借りたお金は、利息を上乗せして返済しなければいけないので注意が必要です。満期時や解約時に返済が完了していない場合は、残債が満期保険金や解約返戻金と相殺されます。

貯蓄型保険のデメリット

メリットがある一方で、貯蓄型保険にはいくつかのデメリットもあります。貯蓄型保険への加入を検討する際には、メリットとデメリットの両方を知っておくことが大切です。

掛け捨て型保険と比べて保険料が割高

貯蓄型保険のデメリットのひとつは、同程度の保障内容の掛け捨て型保険と比べて保険料が割高になってしまう点です。貯蓄型保険の保険料には、将来受取れる満期保険金や解約返戻金を支払うための積立金が上乗せされています。この積立金の分が加わることで、保険料が割高になる仕組みとなっています。

途中解約すると元本割れのおそれがある

貯蓄型保険は、解約のタイミングによっては、払込んだ保険料の総額よりも戻ってくるお金が少なくなる「元本割れ」となる能性があります。貯蓄型保険は基本的に長期運用を前提としているため、短期間で解約すると支払い用の積立金を十分に準備できず、解約返戻金を受取れないか、受取れてもわずかになってしまいます。契約期間が長くなるにつれ積立金が増えるため、貯蓄型保険を解約する際には、元本割れにならないタイミングをしっかり確認することが大切です。

貯蓄型保険への加入が向いている人

貯蓄型保険と掛け捨て型保険のどちらが向いているかは、人によって異なります。生命保険に加入する際には、希望する保障や家計状況等を考慮しながら、自身や家族のニーズに合った商品を選ぶことが大切となるでしょう。

一般的に、貯蓄型保険が向いているといわれるのは、次のようなタイプの人です。

貯蓄が苦手な人

貯蓄が苦手でつい散財してしまいがちな人は、貯蓄型保険への加入がおすすめです。貯蓄型保険の魅力は貯蓄性であり、保障を得ながら同時に資産形成ができる点が大きな特徴です。コツコツ貯蓄をするのが苦手な人でも、貯蓄型保険に加入して保険料を払込めば、預貯金のように気軽にお金をおろすことはできず、その分を使ってしまう心配がありません。

手厚い保障を得つつ目的のための資金を準備したい人

手厚い保障を得つつ目的のための資金を準備したい人には、貯蓄型保険が向いているでしょう。貯蓄型保険は、万が一の保障と将来に向けた貯蓄を両立できます。特に自身の老後資金や子どもの教育資金等は、計画的な準備が必要です。預貯金で対応すれば問題ないと考えていても、予期せぬことが起こった場合は、計画どおりに貯蓄するのが難しくなってしまうかもしれません。リスクに備えながら、将来のライフイベントに向けて必要な資金を用意したいという人には、貯蓄型保険が役に立ちます。

貯蓄型保険への加入に向いていない人

ライフステージが大きく変わる予定(結婚や出産、転職等)のある人は、貯蓄型保険にすぐに加入することはおすすめできません。貯蓄型保険は短くても5年、基本的には10年以上の長期契約が前提になっており、長期にわたって細かく保障内容を見直しにくいことがデメリットといえます。

また、貯蓄型保険は、保険料をなるべく抑えたい人にとって、掛け捨て型保険と比べて保険料の負担が大きく感じられる可能性が高いでしょう。その他、すでに保険以外の方法で貯蓄・資産運用をしている人は、資産形成を保険で行う必要性が低いため、掛け捨て型保険で一定期間の保障を得るという方法も考えられます。

貯蓄型保険を選ぶ際のポイント

貯蓄型保険を選ぶ際には、加入目的を明確にした上で、返戻率にも注目するとよいでしょう。ここからは、貯蓄型保険を選ぶ際に意識したいポイントを紹介します。

返戻率をチェックする

貯蓄型保険への加入を検討する時には、必ず返戻率をチェックしておきましょう。返戻率とは、払込んだ保険料の総額に対して、将来受取れる金額の割合のことです。

<返戻率の例>
険料払込総額100万円で、満期に110万円を受取る場合の返戻率は110%となる

多くの場合、返戻率は保険の設計書に記載されています。ただ、返戻率が100%を超えるタイミングは加入を検討する人の性別や年齢等でそれぞれ異なるため、加入前に確認が必要です。

加入目的を明確にする

保険は、加入の目的を明確にすることが大事です。自分自身の生活環境や将来性、ライフステージの変化等を考慮し、保険を通じて貯蓄をする必要性があるのかどうかを明確にしなければ、余分な保障や特約等を付帯してしまい保険料が高くなる可能性があります。

加入目的を考える上では、「何のためにいくらくらいの貯蓄が必要なのか」「理想の貯蓄を実現させるために、月々いくらまでの保険料を払えるのか」等を整理しなければなりません。加えて、保険料が万が一払えなくなる可能性についても想定しておくとよいでしょう。

■貯蓄型保険に加入する目的の例

保険の種類加入目的の例
終身保険
  • 掛け捨てではない死亡保障を用意したい
  • 葬儀関連の費用を準備したい
養老保険
  • 掛け捨てではない死亡保障を受けたい
  • 貯蓄をしながら一定期間は保障を受けたい
個人年金保険
  • 公的年金ではまかなえない老後の生活費を準備したい
  • 60歳の退職後から老齢年金を受取る65歳までの生活費を用意したい
学資保険
  • 子どもの教育資金を確保したい
  • 親に万が一のことがあっても希望する教育資金を準備したい

保障と資産形成を両立できる貯蓄型保険を検討しよう

貯蓄型保険は、万が一のリスクに手厚く備えながら、目的に合わせた資産形成ができる保険です。将来に向けて資金を貯めたい人や、貯蓄が苦手な人にとって、貯蓄と同時に大きな保障が得られるというメリットがあります。ただし、生命保険に加入する際には、目的や状況に応じて適切な保険商品を選ぶことが大切です。

自分に合った生命保険を選びたい場合は、保険の専門家に相談するのがおすすめです。「ほけんの窓口」では、保険のプランに関する相談や見積もり等が、何度でも無料でご利用いただけます。生命保険への加入を検討する際には、ぜひ「ほけんの窓口」へご相談ください。

監修者プロフィール

黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。FPサテライト株式会社所属FP。

黒川 一美
無料で保険を相談するなら「ほけんの窓口」
「ほけんの窓口」へ相談予約する

関連記事

新着記事