TSマークとは?料金や付帯保険の内容、自転車保険との違いを解説
自転車保険の加入義務化が広がっていることに伴い、選択肢のひとつとして挙がるのが「TSマーク」です。TSマークは、自転車の点検整備が行われた証として自転車に貼られる、青色や赤色、緑色のシールで、自転車向けの保険も付帯されています。
この記事では、TSマークの概要や付帯保険の補償内容、TSマークと一般的な自転車保険との違いについて解説します。
TSマークは自転車安全整備士が点検整備した証
TSマークは、自転車安全整備士が点検整備して、安全な普通自転車(道路交通法に定められた基準に適合した自転車)であることを確認した時に貼付されるマークです。TSとは「TRAFFIC SAFETY」の頭文字で、交通安全という意味です。1979年から現在まで、自転車の安全利用と事故防止を目的として使用されています。
さらに、TSマークには、賠償責任保険と傷害保険等が付帯されています。TSマークは青色・赤色・緑色の3種類があり、種類によって付帯保険の補償内容が変わるため注意が必要です。
TSマーク付帯保険の加入方法
TSマーク付帯保険に加入するには、自転車安全整備店で自転車の有料の点検整備を受ける必要があります。自転車安全整備店とは、公益財団法人日本交通管理技術協会の審査を受けた自転車店のことで、自転車安全整備士の資格を持つ人がいること等が要件となっています。自転車安全整備店で点検整備を行い、TSマークが自転車に貼付されると、自動的に保険が付帯されます。なお、自転車安全整備店で取り扱うTSマークは、1店舗につき、青色・赤色・緑色のいずれか1種類です。
TSマークの有効期間
TSマークの有効期間は、マークに記載されている点検基準日から1年間で、付帯保険の有効期間も同じです。TSマークを継続したい場合は毎年、自転車安全整備店で整備点検を受け、更新する必要があります。自転車を安全に利用するために、1年に1回は自転車の定期点検を行うことが推奨されています。
TSマークの料金
TSマークの料金は、自転車の有料の点検整備を受ける際の金額となります。点検整備を受けずにTSマークを貼ることはできません。金額は自転車安全整備店ごとにそれぞれ異なりますが、点検整備を含めて2,000~3,000円程度が相場です。店舗が扱っているマークの色によって補償内容が変わるため、それによって金額も変動します。なお、点検整備を受けた結果、部品の交換等が発生した場合は、別途部品代等が必要です。
TSマーク付帯保険の補償内容や特徴
TSマークには、賠償責任保険や傷害保険等が付帯されていて、TSマークが貼られた自転車を運転中の人が事故等を起こした際に適用されます。そのため、その自転車を運転中の事故であれば、所有者はもちろん、家族や友人等であっても対象となります。
ここからは、TSマークの付帯保険について詳しく見ていきましょう。
マークの色によって異なる補償内容
TSマークの付帯保険の補償内容には、「賠償責任補償」「傷害補償」「被害者見舞金」があり、マークの色によって内容が異なります。TSマークの色は青色・赤色・緑色の3種類で、色によって補償の条件や限度額、被害者見舞金の有無等が変わってきます。
マークの色による補償内容の違いは、以下の表のとおりです。
■TSマークの色による補償内容の違い
補償の種類 | 補償の条件 | 青色マーク | 赤色マーク | 緑色マーク |
---|---|---|---|---|
賠償責任補償 | 死亡・重度後遺障害(1~7級) ※緑色マークのみすべての人身事故が補償対象 | 1,000万円 | 1億円 | 1億円 ※示談交渉サービス付き |
傷害補償 | 死亡・重度後遺障害(1~4級) | 30万円 | 100万円 | 50万円 |
入院(15日以上) | 1万円 | 10万円 | 5万円 | |
被害者見舞金 | 入院(15日以上) | なし | 10万円 | 賠償責任補償により対応 |
・賠償責任補償
TSマークの貼られた自転車に搭乗中の人が他人を死亡させた、または重度後遺障害や傷害(緑色マークのみ)を負わせたことにより、法律上の損害賠償責任が発生した場合の補償です。
・傷害補償
TSマークの貼られた自転車に搭乗中の人が、交通事故によって死亡した場合、または重度後遺障害を負ったり入院したりした場合の補償です。
・被害者見舞金
TSマーク(赤色マークのみ)の貼られた自転車に搭乗中の人が他人に15日以上入院が必要な傷害を負わせ、法律上の損害賠償責任が発生した場合に支払われる金額です。
マークの色によって内容が異なってくるため、補償内容を確認したい場合は、自転車の整備点検を受ける自転車安全整備店で、どのマークを扱っているか確認することが必要です。
一般的に販売されている自転車保険との違い
TSマークの付帯保険と一般的に販売されている自転車保険では、補償内容が異なります。TSマークの付帯保険は2022年12月に緑色マークが新設され、すべての人身事故が賠償責任補償の支払い対象になりましたが、一般的に販売されている自転車保険に比べると、補償を受けられる条件が限定的で、補償金額も低くなっています。もし自転車事故を起こしてしまっても、十分な補償を受けられない可能性があります。
一方で、一般的に販売されている自転車保険は、金額や補償の範囲等を幅広く選べるようになっています。TSマークの付帯保険の補償は、事故の相手や運転者等の「人」に対する損害のみに限られますが、自転車保険は商品によって、「物」に対する補償も含まれています。その他にも、ロードサービスが自動セットされていたり、車両盗難特約、弁護士費用特約等が付けられたりする自転車保険もあるため、自分に必要な内容を検討できるでしょう。
事故への備えはTSマークで十分?
自転車向けの保険を検討する中で、自転車事故への備えはTSマークで十分なのではないかと考える方も多いかもしれません。近年は多くの自治体において、条例によって自転車保険への加入が義務化または努力義務化されており、この対応ということであれば、TSマークの付帯保険でもさほど問題はないでしょう。また、TSマークの付帯保険は、点検整備を受けた自転車本体に適用される保険なので、1台の自転車を家族みんなで使用している等、複数の人が交代で乗るような自転車には向いているといえます。
しかし、通勤や通学、買い物等、日常的かつ頻繁に自転車を利用する人で、TSマークの付帯保険だけでは補償内容に不安を感じる場合は、一般的に販売されている自転車保険に加入するのがおすすめです。
なお、「自転車保険」という名称ではなくても、個人賠償責任保険に加入していれば、自転車事故による損害賠償や、自治体による自転車保険加入義務化にも対応が可能です。個人賠償責任保険は、自動車保険や火災保険、傷害保険に特約として付帯されていたり、クレジットカードに付帯されていたりする場合もあります。損害保険は同じ補償内容に重複して加入していてもひとつの補償しか受けられないため、すでに契約している保険や、これから加入する予定の保険でカバー可能なものがないか、補償内容をよく確認してみましょう。
自転車保険の入り方については、以下の記事をご覧ください。
自転車保険の入り方とは?どこで入る?加入方法や保険の選び方を解説
補償内容で選ぶなら自転車保険への加入がおすすめ
TSマークの付帯保険に加入するには、自転車安全整備士による点検整備を、年に1回受ける必要があります。TSマークは、定期点検のついでに貼ってもらうという認識であればよいでしょう。しかし、日常生活の中でよく自転車を使用する人や、より充実した補償が必要な人には、一般的に販売されている自転車保険がおすすめです。
自転車保険に加入する際には、万が一の事故等を考え、自分や家族にとって必要な補償内容が含まれている保険を選ぶことが大切です。自転車保険の選び方で迷った時には、保険の専門家に相談するとよいでしょう。「ほけんの窓口」では、保険のプランに関する質問や見積もり等が、何度でも無料で相談できます。自分に合った自転車保険を検討したい場合は、ぜひ「ほけんの窓口」へご相談ください。
- ※特約の名称や補償内容は保険会社ごとに異なります。
- ※当ページでは自転車保険に関する一般的な内容を記載しています。個別の保険商品等の詳細については保険会社および取扱代理店までお問い合わせください。
監修者プロフィール
原 絢子
日本FP協会 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
自分で保険の見直しを行ったのをきっかけに、お金の知識を身につけることの大切さを実感し、ファイナンシャルプランナーとして活動を始める。モットーは「自分のお金を他人任せにしない」。一人でも多くの人がお金を味方につけて、自分の思い描く人生を歩んでほしいと、マネーリテラシーの重要性を精力的に発信している。FPサテライト株式会社所属FP。