就業不能保険はいらない?必要性や保障内容、メリット・デメリット

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病気やケガで長期間働けなくなると、その分収入が減ってしまい、日々の生活費をどう工面するかが問題になります。就業不能保険は、そのような病気やケガによる収入減少に備えるための保険です。「公的な保障制度があるから、わざわざ入る必要はない」という意見もありますが、本当にいらないのでしょうか。

ここでは、就業不能保険のメリット・デメリットの他、就業不能保険の必要性が高い人、収入保障保険・所得補償保険との違い、加入を検討する際のポイント等について解説します。

就業不能保険は就業不能状態の場合に給付金が受取れる保険

就業不能保険は、病気やケガ等により保険会社所定の就業不能状態になった時に、給付金が受取れる保険です。長期間働けなくなることによる、収入の減少に備えることが可能です。「就業不能状態」の定義は保険商品によって異なりますが、多くの場合、「病気やケガの治療のために長期間入院している」「医師の指示により在宅療養で治療に専念している」「障害等級1級または2級に認定された」等のいずれかにあてはまると就業不能状態に該当します。

就業不能保険は、毎月給付金を受取れるタイプが一般的ですが、一時金として受取るタイプ、一時金と月払が組み合わさったタイプ等、多様な種類があります。毎月受取るタイプでも、受取れる期間は商品によりさまざまです。一定期間に限られる保険だけでなく、就業不能状態が継続しているあいだは保険期間満了まで受取れる保険や、就業不能状態から回復しても保険期間満了まで受取れる保険等もあります。また、就業不能保険には、60日や180日等の免責期間が設けられているのが一般的です。そのため、就業不能になったからといって、すぐに給付金を受取れるわけではない点に注意しましょう。

就業不能保険がいらないとされる理由

就業不能保険について、わざわざ入る必要はないと考える人もいます。その主な理由には、病気やケガによる就業不能時は、公的医療保険である程度保障されるという考えがあるようです。例えば、公務員や会社員が病気やケガによって会社を休んだ場合、連続する3日間の待期期間を経過すれば、健康保険の傷病手当金の支給対象となり、最大1年6か月間、給与の約3分の2の額を受取れます。

もっとも、この公的医療保険の保障だけで休業中の自分や家族の生活費をまかなうことができるかどうかは、確認しておく必要があるでしょう。

また、自営業者や個人事業主等が加入する国民健康保険には傷病手当金がありません。公的医療保険の保障では病気やケガによる休業中の収入減少がカバーされませんので、自営業者や個人事業主等の場合は、就業不能保険等で備えることを検討してもよいでしょう。

就業不能保険のメリット

就業不能保険に加入することで、就業できなくなった場合の生活費の不安を軽減するメリットを得られます。ここでは2つのメリットについて解説します。

公的医療保険で不足する生活費をまかなえる

就業不能保険に加入するメリットは、公的医療保険による保障では不足する生活費をまかなえることです。会社員や公務員等が加入する健康保険では、傷病手当金を受取れますが、それで自分や家族の生活費のすべてをまかなうことは難しい可能性があります。また、個人事業主等が加入する国民健康保険には、原則的に、傷病手当金がありません。そのような場合に、就業不能保険に加入すれば、公的医療保険による保障では足りない分を補うことができるのです。

医療保険でカバーできない保障を得られる

民間の医療保険ではカバーできない保障を得られることも、就業不能保険のメリットといえるでしょう。民間の医療保険は基本的に入院や手術の際に保険金を受取れる保険であり、退院後の在宅での療養期間まではカバーされません。また一般的に、長期間の入院もカバーしていません。一方、就業不能保険は、長期間働けなくなった場合に備える保険ですので、在宅での療養期間や長期入院にかかる費用をまかなうことが可能です。

就業不能保険のデメリット

就業不能保険にはさまざまなメリットがある一方で、デメリットもあります。ここでは就業不能保険の2つのデメリットについて解説します。

免責期間が設けられている

就業不能保険のデメリットとして、免責期間が設けられていることが挙げられます。就業不能保険は、30日から180日程度の免責期間が設けられているのが一般的です。その間に回復して就業できる状態になった場合、給付金は受取れません。また、免責期間が短いほど保険料は高く、長いほど安くなる傾向があります。

うつ病等の精神疾患は保障対象とならないことが多い

うつ病等の精神疾患は保障対象とならないことが多い点も、就業不能保険のデメリットといえるでしょう。どのような病気やケガの場合に給付金が受取れるかは保険商品によって異なりますが、多くの場合、精神疾患による就業不能は保障対象となりません。精神疾患をカバーしている商品であっても、給付要件が厳しい、受取れる額が少ない等、さまざまな制限があることが一般的です。加入前に、保障対象について確認しておくことが大切になります。

就業不能保険の必要性が高い人

就業不能保険は、公的医療保険でカバーしきれない休業中の収入減少や、民間の医療保険ではカバーできない長期の療養中の費用等に備える保険です。そのため、就業不能保険が必要かどうかは、個々人の状況によって変わってきます。就業不能保険の必要性が高い人について解説します。

個人事業主

就業不能保険の必要性が高い人として、まずは個人事業主が挙げられます。自営業等の個人事業主には、傷病手当金のような、病気やケガで働けない時期への公的医療保険の保障がありません。就業不能状態になった場合、その間の生活費はすべて自分でまかなわなくてはならず、公的医療保険の保障がある会社員や公務員等よりもリスクが大きいといえるでしょう。そのため、就業不能保険で備えるのもひとつの方法です。

貯蓄の少ない人

貯蓄の少ない人も、就業不能保険の必要性が高いといえるでしょう。貯蓄が十分にあれば、収入が一時的に少なくなっても不足分を補って生活できますが、貯蓄が少なければ、すぐに生活費が足りなくなってしまいかねません。また、住宅ローンの返済中等で毎月の固定費が大きい人も、公的医療保険の保障だけでは生活費の確保が困難になる可能性が高いので、貯蓄が少ない場合は、就業不能保険で備えることも選択肢のひとつです。

就業不能保険の必要性が低い人

就業不能保険の必要性が高い人がいる一方で、就業不能保険の必要性が低い人もいます。例えば、十分な貯蓄があって、就業不能期間が多少続いても生活に困らない人は、就業不能保険の必要性は低いといえます。また、公的医療保険の保障だけで生活費がまかなえる人や、家賃収入や株式の配当等があり、就業不能になっても十分に生活するだけの収入を得られる人も、就業不能保険はそれほど必要ではないといえるでしょう。

就業不能保険と収入保障保険・所得補償保険との違い

就業不能保険と似た名称・内容の保険に、収入保障保険や所得補償保険があります。これらとの違いについて解説します。

■就業不能保険と収入保障保険・所得補償保険の違い

就業不能保険収入保障保険所得補償保険
保険の種類生命保険生命保険損害保険
主な加入目的被保険者が病気やケガで仕事ができなくなった時の生活費の確保遺族の生活費の確保被保険者が病気やケガで仕事ができなくなった時の生活費の確保
死亡保険金なしありなし
保険期間・保険料支払期間契約時に決めた満了日まで(一般的に、60歳、70歳等)契約時に決めた満了日まで(一般的に、60歳、70歳等)1年、2年等の一定期間。更新可能な場合あり
保険金等を受取れる時医師により就業不能状態と診断された場合死亡または保険会社所定の高度障害状態医師により就業不能状態と診断された場合

就業不能保険と収入保障保険の違い

就業不能保険と収入保障保険は、保険に加入する目的が異なります。就業不能保険は、被保険者が病気やケガで働けない期間の収入減少に備えるものですが、収入保障保険は、被保険者が万が一の場合に、遺族が経済的に困らないように備える保険です。収入保障保険は、被保険者が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった場合に、給付金が支払われる保険で、死亡時から保険期間満了まで、年金形式で毎月一定額を受取れます。一方、就業不能保険は、被保険者の死亡時ではなく、就業不能状態になった時に給付金が受取れます。

収入保障保険については、下記の記事をご覧ください。
収入保障保険とは?メリット・デメリットや必要な人を解説

就業不能保険と所得補償保険の違い

就業不能保険と所得補償保険は、保険期間や給付金を受取れる時期・期間が大きく異なります。就業不能保険は、保険期間を60歳まで、70歳まで等の長期で設定することが可能で、長期にわたって保障を確保できます。ただし、基本的に60日や180日等の免責期間があり、すぐに給付金を受取れるわけではありません。一方で、所得補償保険は、保険期間が1年から2年と短く、免責期間も7日程度と短いものが一般的です。また、取扱う保険会社も異なります。どちらも病気やケガで働けない場合に給付金が受取れるのは同じですが、就業不能保険は生命保険、所得補償保険は損害保険が扱っています。

所得補償保険については、下記の記事をご覧ください。
所得補償保険とは?就業不能保険等との違いやおすすめの選び方

就業不能保険への加入を検討する際のポイント

就業不能保険に加入する際は、自分に合った保障内容を選ぶことが重要です。ここでは、4つのポイントを紹介します。

受けられる公的保障を確認する

就業不能保険が必要かどうか考える際のポイントとして、病気やケガで就業不能状態になった時に受けられる公的保障を確認することが挙げられます。傷病手当金等の公的医療保険の保障を、どのような場合に、どれくらいの金額を受取れるのかを確認しましょう。

働けなくなった時に必要な金額を確認する

働けなくなった時に必要な金額についても確認しましょう。生活費や住宅ローン等、毎月必要となる金額を確認し、公的医療保険の保障や貯蓄等で足りない金額がどれくらいになるのかを計算します。この不足額が、就業不能保険で補う額となります。

対象となる就業不能状態と加入条件を確認する

保障対象となる就業不能状態と加入条件の確認も大切です。どのような病気やケガの場合に保障を受けられるのかを確認し、就業不能状態として認定される条件をチェックします。また、加入可能な年齢や健康状態等の、加入条件も確認しておくとよいでしょう。

就業不能保険の保険期間や受取り方等を確認する

就業不能保険への加入を検討する際には、就業不能保険の保険期間や受取り方等についてもチェックしましょう。保険商品によって、免責期間や保険金を受取れるケース、一時金か月払か等の受取り方、いくら給付されるのか等の条件は異なります。必要な時に、必要な保障が受けられるかどうかを確認することが重要です。

特徴と必要性を理解した上で就業不能保険を選ぼう

病気やケガで就業できず、収入が減ったとしても、毎月の生活費はかかります。就業できなくなった場合、会社員や公務員であれば傷病手当金が受取れますが、十分な金額とはいえない場合もあります。また、個人事業主等の国民健康保険加入者には、そもそも傷病手当金がありません。貯蓄や他の収入で生活費をまかなうことが難しいようなら、就業不能保険への加入を検討しましょう。就業不能保険は、保険商品によって免責期間や給付金が受取れる条件が違うので、必要な時に必要な保障を受けられるものを選ぶことも重要です。

「ほけんの窓口」では、就業不能保険に関する質問や見積もり等が、何度でも無料で相談できます。就業不能保険について疑問点がある場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

監修者プロフィール

原 絢子
日本FP協会 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

自分で保険の見直しを行ったのをきっかけに、お金の知識を身につけることの大切さを実感し、ファイナンシャルプランナーとして活動を始める。モットーは「自分のお金を他人任せにしない」。一人でも多くの人がお金を味方につけて、自分の思い描く人生を歩んでほしいと、マネーリテラシーの重要性を精力的に発信している。FPサテライト株式会社所属FP。

原 絢子さん
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