火災保険と地震保険は
年末調整や確定申告で保険料控除を受けられる?
年末調整や確定申告で保険料控除を受けられる?

生命保険等の保険料を払込んでいる人は、年末調整や確定申告で保険料控除を受けられます。では、火災保険の保険料は、保険料控除の対象になるのでしょうか。また、火災保険とセットで加入できる地震保険の保険料は、保険料控除が適用されるのでしょうか。
ここでは、年末調整や確定申告で受けられる保険料控除について、火災保険や地震保険が対象になるか、対象になる場合はどのように申請すればいいか等を、具体的に解説していきます。
この記事のポイント
- 火災保険は、保険料控除の対象外
- 一定の要件を満たす長期の火災保険に限り、地震保険料控除の対象になる
- 火災保険とセットで地震保険に加入している場合は、地震保険料が控除の対象になる
- 地震保険料控除は、賃貸住宅でも持ち家でも受けられる
火災保険のみ加入している場合は、年末調整や確定申告で保険料控除を受けられない
結論からいうと、火災保険は保険料控除の対象外です。火災保険と地震保険とのセットではなく、火災保険のみ加入している場合は、年末調整や確定申告で保険料控除を受けることはできません。
保険料控除とは、所得控除のひとつで、1年間に払込んだ保険料の額に応じて、一定額または全額が所得から差し引かれる制度です。年末調整や確定申告で保険料控除を申告すると、税額計算のベースになる所得から一定額または全額が差し引かれるため、所得税や住民税の負担が軽減されます。
年末調整や確定申告で適用される保険料控除は、「生命保険料控除」「地震保険料控除」「社会保険料控除」「小規模企業共済等掛金控除」の4つです。火災保険料については、控除は適用されません。
以前は「損害保険料控除」という制度があり、火災保険料も年末調整や確定申告で申請すれば、控除を受けられましたが、2006年の税制改正により損害保険料控除が廃止され、現在は適用対象外になりました。
ただし、経過措置として、所定の要件を満たす長期の火災保険(旧長期損害保険)は、引き続き控除(地震保険料控除)を受けられます。
地震保険に加入している場合は、年末調整や確定申告で保険料控除を受けられる
火災保険そのものは保険料控除の対象外ですが、火災保険とセットで加入する地震保険は、年末調整や確定申告で保険料控除を受けることができます。この控除制度を「地震保険料控除」といいます。地震保険料控除は、かつて存在した損害保険料控除に代わり、2007年に新たに創設された所得控除です。
地震保険は、地震等を原因とする建物や家財の損害を補償する保険です。具体的には、地震や噴火またはこれらによる津波を原因とする建物と家財の損害が補償されます。地震保険は単独での加入はできず、必ず火災保険とセットで加入しなければなりません。
地震保険料控除を適用すると、1年間に払込んだ地震保険料に応じて、一定額が所得から差し引かれます。これより、地震による損害への備えを持つ人に対して、所得税や住民税の負担が軽減される仕組みです。
地震保険料控除の控除額は保険料によって変わる
地震保険料控除の控除額は、その年の1月1日~12月31日の間に払込んだ地震保険の保険料の額に応じて決まります。なお、地震保険料控除の対象となるのは、地震保険部分の保険料のみです。火災保険と地震保険の分を足した合計額ではないため注意してください。
地震保険料の控除額は、以下のとおりです。
■地震保険料の控除額
年間払込地震保険料の合計 | 控除額 | |
---|---|---|
所得税 | 5万円以下 | 地震保険料の金額 |
5万円超 | 一律5万円 | |
住民税 | 5万円以下 | 地震保険料の1/2 |
5万円超 | 一律2万5,000円 |
賃貸住宅でも地震保険料控除は受けられる
地震保険料控除は、賃貸住宅でも持ち家でも同様に受けられます。地震保険料控除の申請が可能なのは、保険契約者または生計を共にする家族や親族の住居や、これらの人が所有する家財を対象とした地震保険契約です。賃貸か持ち家かを問わず、地震保険に加入して保険料を払込んでいれば、地震保険料控除の対象になります。ただし、賃貸アパートのオーナー等、居住していない物件の地震保険は対象にはなりません。
要件を満たす火災保険は地震保険料控除の対象になる
2006年の税制改正により損害保険料控除が廃止されましたが、経過措置として、一定の要件を満たす長期損害保険の火災保険は、地震保険料控除の対象とすることができます。
経過措置が適用されるのは、長期損害保険契約のうち、以下の3つの条件をすべて満たしている契約です。
<経過措置の適用条件>
- 2006年12月31日までに締結した契約(保険期間または共済期間の始期が2007年1月1日以後のものは除く)
- 満期返戻金等のあるもので保険期間または共済期間が10年以上の契約
- 2007年1月1日以後にその損害保険契約等の変更をしていないもの
上記の要件を満たす火災保険について、旧長期損害保険料として地震保険料控除の申請をする場合は、控除額の計算方法が異なります。旧長期損害保険料の控除額は、以下のとおりです。
■旧長期損害保険料の控除額
年間の払込保険料の合計 | 控除額 | |
---|---|---|
所得税 | 1万円以下 | 保険料の全額 |
1万円超2万円以下 | 保険料の1/2+5,000円 | |
2万円超 | 一律1万5,000円 | |
住民税 | 5,000円以下 | 保険料の全額 |
5,000円超1万5,000円以下 | 保険料の1/2+2,500円 | |
1万5,000円超 | 一律1万円 |
なお、人によっては、「地震保険」と「旧長期損害保険」の両方を契約していることがあるかもしれません。地震保険契約と旧長期損害保険契約の両方がある場合の控除額は、それぞれの方法で計算した金額の合計額となります。この場合の年間控除限度額は、所得税が5万円、住民税が2万5,000円です。
地震保険料控除の申請方法
地震保険料控除は、年末調整か確定申告で申請が必要です。地震保険料を払込んでいても、申請手続きをしなければ地震保険料控除は適用されません。
ここからは、地震保険料控除の申請方法について解説していきます。
地震保険料控除証明書を用意する
地震保険料控除の申請にあたっては、保険会社が発行する「地震保険料控除証明書」が必要です。地震保険料控除証明書は、一般的には10月頃に、加入している保険会社から契約住所宛にはがきで郵送されます。地震保険料控除証明書が手元に見当たらない場合は、保険会社に連絡すれば、再発行してもらうことが可能です。ただし、郵送での再発行には1週間~10日ほどかかる場合もあります。保険会社から地震保険料控除証明書が届いたら、年末調整や確定申告の時期まで、紛失しないようにしっかり保管しておきましょう。
また、地震保険料控除証明書は、従来のはがきによる交付だけではなく、電子データ(電子的控除証明書)で受取る方法もあります。電子データの地震保険料控除証明書であれば、はがきの証明書に比べて手続きがスムーズになり、紛失リスクも防げます。はがきの再発行を急ぐ場合は、電子発行を検討するのもひとつの方法です。
電子発行は、例えば、日本損害保険協会の「保険料控除証明書発行サービス」で、各損害保険会社が発行する地震保険料控除証明書の電子データをダウンロードできます。また、マイナンバーカードがあれば、マイナポータル連携により、さまざまな電子的控除証明書の一括取得も可能です。
取得した電子データは、年末調整の際に勤務先に提出したり、e-Taxでの確定申告で申告書に添付したりすることができます。
なお、勤務先が電子データに対応していない場合や、書面で確定申告をする場合等は、国税庁のWebサイトから「QRコード付証明書等作成システム」を利用し、プリントアウトして提出してください。
- ※QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
手続きごとに申告書を提出する
年末調整か確定申告かによって、地震保険料控除の申請に必要な書類や提出先は異なります。
年末調整の場合は、「給与所得者の保険料控除申告書」の「地震保険料控除」の欄に必要事項を記入し、地震保険料控除証明書とともに勤務先へ提出します。提出期限は勤務先によって異なるため、確認しましょう。
一方、確定申告の場合は、確定申告書 第一表・第二表の「地震保険料控除」の欄にそれぞれ記載し、地震保険料控除証明書とともに税務署へ提出します。e-Taxなら地震保険料控除証明書の提出を省略できますが、確定申告の期限から5年間の保存が必要です。提出期限は、申告する年(保険料を払込んだ年)の翌年2月16日~3月15日(土日祝日の場合は翌平日)です。
なお、会社員等で「年末調整の時に地震保険料控除の申請を忘れた」「地震保険料控除証明書の勤務先への提出が年末調整に間に合わなかった」というような場合は、あらためて自分で確定申告をすれば、控除が適用されます。
地震保険とセットで加入することで、火災保険加入者も保険料控除を受けられる
火災保険は保険料控除の対象にはなりませんが、地震保険は対象となります。火災保険と地震保険をセットで加入している場合は、年末調整や確定申告で忘れずに地震保険料控除の申請手続きをしましょう。
「地震保険とセットで加入していない」という場合は、保険期間の途中からでも地震保険の加入が可能です。
火災保険や地震保険、保険料控除等について悩みや疑問がある時は、保険の専門家に相談することをおすすめします。「ほけんの窓口」では、火災保険のプランに関する質問や見積もり等が、何度でも無料で相談できます。火災保険とあわせて地震保険への加入を検討したい場合も、ぜひ「ほけんの窓口」へご相談ください。
- ※特約の名称や補償内容は保険会社ごとに異なります。
- ※当ページでは火災保険・地震保険に関する一般的な内容を記載しています。個別の保険商品等の詳細については保険会社および取扱代理店までお問い合わせください。
- ※本コラムは、2025年1月現在の税制・税率に基づき作成しております。税制・税率は将来変更されることがあります。
(2025年2月承認)B24-103709
火災保険・地震保険の年末調整についてよくある質問
火災保険・地震保険の年末調整について、よく聞かれる疑問をまとめました。それぞれの質問について解説していますので、参考にしてください。
- 火災保険の保険料は、保険料控除の対象になりますか?
- 火災保険の保険料は、保険料控除の対象になりません。以前は「損害保険料控除」という制度があり、火災保険も年末調整や確定申告で申請すれば、控除を受けられましたが、2006年の税制改正により損害保険料控除が廃止され、現在は適用対象外になりました。ただし、経過措置として、所定の要件を満たす長期の火災保険(旧長期損害保険)は、引き続き控除(地震保険料控除)を受けられます。
- 地震保険の保険料は、保険料控除の対象になりますか?
- 地震保険の保険料は、保険料控除の対象になります。そのため、火災保険と地震保険をセットで加入している場合は、保険料控除を受けることが可能です。この控除制度を「地震保険料控除」といいます。地震保険料控除は、かつて存在した損害保険料控除に代わり、2007年に新たに創設された所得控除です。
- 地震保険料控除の申請方法を教えてください。
- 地震保険料控除の申請方法は、地震保険料控除証明書を用意して、年末調整か確定申告かにあわせて必要な申告書を提出します。年末調整の場合は、「給与所得者の保険料控除申告書」の「地震保険料控除」の欄に必要事項を記入し、地震保険料控除証明書とともに勤務先へ提出します。提出期限は勤務先によって異なるため、確認しましょう。
- 地震保険料控除が受けられる火災保険とは?
- 地震保険料控除が受けられる火災保険は、長期損害保険のうち、(1)2006年12月31日までに締結した契約(保険期間または共済期間の始期が2007年1月1日以後のものは除く)、(2)満期返戻金等のあるもので保険期間または共済期間が10年以上の契約、(3)2007年1月1日以後にその損害保険契約等の変更をしていないもの、すべての要件を満たしている契約を指します。
監修者プロフィール
黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。FPサテライト株式会社所属FP。

