公的介護保険の介護保険料はいくら払う?月額平均や納付方法を解説
40歳になると、公的医療保険とあわせて、公的介護保険(以下、介護保険)に加入することになります。ただ、介護保険の加入義務について知っていても、自分が納める介護保険料の金額までは、あまり意識したことがない人もいるかもしれません。介護保険料の納付額や納付方法は、年齢や加入している公的医療保険の種類によっても異なります。
ここでは、介護保険料の納付対象者や計算方法、納付方法の他、介護保険料が減免されるケースについても解説します。
介護保険料は原則40歳から支払う
介護保険料の納付義務は、満40歳に達した時に発生します。満40歳に達した時とは「40歳の誕生日の前日」のことを指し、その日が属する月から保険料を納める必要があります。例えば、誕生日が7月2日の人なら、前日は7月1日なので、40歳になる年の7月分から介護保険料の支払いが必要です。また、誕生日が7月1日の人の場合、その前日は6月30日なので、6月分から介護保険料の納付が始まります。なお、介護保険料の支払いは無期限で、生涯にわたって続きます。自分が高齢になったり要介護状態になったりしても、介護保険料の支払いは必要です。
そもそも介護保険は、社会全体で介護を支えることを目的に、自治体が運営する公的保険制度です。40歳以上の公的医療保険に加入している人は、自動的に介護保険の被保険者(加入者)になります。日本は国民皆保険であり、すべての人が何らかの公的医療保険に加入しているため、40歳以上の人は基本的に介護保険に加入し、保険料を支払うことになります。加入を拒否したり脱退したりすることはできません。
加えて、介護保険は、公的医療保険とは異なり、利用できる人が限られています。介護保険の加入者は年齢によって、65歳以上の「第1号被保険者」と、40歳以上65歳未満の「第2号被保険者」に区分されます。
このうち、介護保険のサービスを利用できるのは、第1号被保険者で要介護・要支援認定を受けた人、または第2号被保険者で特定疾病(初老期における認知症、脳血管疾患等、老化が原因とされる病気)により要支援・要介護認定を受けた人です。介護保険サービスを利用する際の自己負担額は、所得に応じて1~3割で、のこりは被保険者が納めた保険料と公費でまかなわれています。
介護保険料はいくら払う?
介護保険料はいくらかかるのか、気になる人も多いでしょう。介護保険料の計算方法は、第1号被保険者と第2号被保険者で異なります。それぞれの計算方法をご紹介します。
第1号被保険者(65歳以上)の場合
第1号被保険者の介護保険料は、自治体ごとに計算される「基準額」に、所得の段階別に設定された割合を掛けて算出されます。
基準額とは、その自治体における介護給付の見込額に対する、第1号被保険者一人あたりの負担額を計算したものです。基準額は、自治体によって異なり、3年ごとに改定されます。
また、基準額に掛ける割合は、本人や世帯の所得状況を区分した段階によって決まります。所得段階は9段階に分かれていることが標準的ですが、10段階以上としたり、段階ごとに独自の割合を設定したりする自治体も増えています。
第2号被保険者(40歳以上65歳未満)の場合
第2号被保険者の場合は、加入する公的医療保険の種類によって、介護保険料の計算方法が変わります。
会社員等で健康保険(協会けんぽや健康保険組合等)に加入している場合は、給与や賞与の金額に基づいて決まる標準報酬月額や標準賞与額に、所定の介護保険料率を掛けて計算します。介護保険料率は、加入する公的医療保険によって異なるため、確認が必要です。また、算出された介護保険料は、原則として、勤務先と被保険者が折半で負担します。
一方、自営業等で国民健康保険に加入している場合は、前年の所得や世帯における被保険者の人数、資産等によって介護保険料が決まります。計算方法や介護保険料率は自治体によって異なるため、居住地の自治体に確認しましょう。
介護保険料の月額平均
厚生労働省の「令和5年度 介護納付金の算定について(報告)」によれば、2021~2023年度における第1号被保険者の介護保険料の基準額は、月額平均が6,014円でした。ただし、実際の納付額は、基準額に所定の割合を掛けて算出されるため、自治体や所得等によってかなり幅があります。また、第2号被保険者の介護保険料は、事業主負担分や公費分を含め、2023年度の見込額が月額平均6,216円となっています。
介護保険制度が創設された2000年度は、いずれも2,000円台でした。第1号・第2号被保険者ともに、介護保険料の負担は年々増加傾向にあります。
※出典:厚生労働省「令和5年度 介護納付金の算定について(報告)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001063192.pdf
介護保険料の納付方法
介護保険料の納付方法も、第1号被保険者と第2号被保険者で異なります。それぞれ、どのように介護保険料を納付するのか確認しておきましょう。
第1号被保険者(65歳以上)の場合
第1号被保険者の介護保険料は、原則として年金から自動的に天引きされます(特別徴収)。年金から差し引かれた介護保険料は、自動的に自治体へ納付されるため、本人や家族が特別な手続きをする必要はありません。
ただし、年金の受給額が年間18万円(1か月あたり1万5,000円)未満の場合は、自治体から届く納入通知書や口座振替で納付します(普通徴収)。
第2号被保険者(40歳以上65歳未満)の場合
第2号被保険者の介護保険料は、公的医療保険の保険料といっしょに納めます。健康保険に加入している場合は、健康保険料とあわせて、給与や賞与から天引きされます。なお、40歳以上65歳未満の健康保険の被扶養者(会社員の妻等)の介護保険料は、被保険者の保険料に含まれているので、別途納める必要はありません。
一方、国民健康保険加入者の場合は、40歳になると、国民健康保険料に自動的に介護保険料が上乗せされます。現金納付や口座振替等、それまでと同様の方法で国民健康保険料を納めれば、同時に介護保険料も納付したことになります。
介護保険については、以下の記事をご覧ください。
介護保険料は何歳から支払う?サービスを使える年齢や条件を解説
介護保険料を滞納するとどうなる?
介護保険料を滞納すると、ペナルティが発生します。滞納期間によって、ペナルティの内容が異なります。それぞれのパターンを見ていきましょう。
納付期限を過ぎて1年未満の場合
介護保険料を期限までに納めないと、基本的には納付期限から20日以内に督促状が発行され、延滞金や督促手数料が発生します。具体的な金額は自治体によって異なりますが、延滞金は、納付期限の翌日から実際の納付日までの日数で計算されることが一般的です。
納付期限から1年以上1年半未満滞納した場合
納付期限から1年以上経過すると、ペナルティがさらに大きくなり、介護保険サービスを利用した際の自己負担額が10割(全額自己負担)となります。ただし、所定の申請手続きをすれば、全額支払ったサービス利用料から自己負担分を差し引いた額(7~9割分)が払戻されます。
納付期限から1年半以上2年未満滞納した場合
滞納期間が1年半以上になると、介護保険サービスの利用料が全額自己負担になる上、払戻しの申請をしても、払戻される金額の一部または全額が一時的に差し止めになります。滞納が続くと、差し止められている金額から滞納した介護保険料が徴収されます。
納付期限から2年以上滞納した場合
滞納期間が2年を過ぎると、介護保険料の「未納」が確定となり、滞納分をさかのぼって納めることができなくなります。本来なら1~3割である介護保険の自己負担割合が、3~4割に引き上げられます。さらに、1か月に支払った利用者負担の合計が負担限度額を超えた場合に払戻される「高額介護サービス費制度」も利用できなくなるため、注意が必要です。
介護保険料の減免措置が受けられるケース
介護保険料の滞納や未納には大きなペナルティが発生します。しかし、何らかの事情により、介護保険料の納付が厳しくなるケースもあるでしょう。以下のような場合は、介護保険料が減免される措置が設けられています。
大幅な収入減少があった場合
やむをえない事情で大幅な収入減少があった場合、介護保険料が減免される可能性があります。例えば、生計を維持する人の死亡や重大な障害、長期入院の他、事業の休止・廃止、失業等により、収入が大幅に減少したようなケースです。減免となる条件や金額は、自治体によって異なります。
災害による被害があった場合
地震等の災害によって大きな被害を受けた場合、被害の程度に応じて、介護保険料が減額や免除、猶予される可能性があります。減免の申請にあたっては、罹災証明書等の損害割合が確認できる資料の提出が求められます。
低所得者で生活が困難な場合
所得が低く、自治体から生活が困難と認められた場合は、介護保険料の減免対象となります。減免措置を受けるには、所得の他、資産の有無や、扶養する家族や親族の有無等、自治体が定める条件を満たす必要があります。
各自治体の減免措置制度の条件に該当する場合
上に挙げた以外にも、自治体ごとに独自の減免措置を設けている場合があります。減免の条件や割合、申請方法等は、各自治体によって異なるため、居住する各自治体に確認しましょう。
介護保険料は納付期日までに支払い、将来の介護生活に備えよう
40歳以上の人は、原則として、介護保険料を納める義務があります。将来、介護が必要になった時の負担を軽減するためにも、介護保険料は滞納せずにきちんと納めることが大切です。「まだ介護は必要ないから」と介護保険料を滞納してしまうと、ペナルティが発生し、要介護状態になった時に経済的な負担が大きくなるかもしれません。
また、実際に介護が必要になるとさまざまな費用がかかり、公的な介護保険だけではすべてをカバーしきれない可能性があります。公的介護保険だけではまかないきれない経済的な負担に備えるには、民間の介護保険を検討するのもひとつの方法です。「ほけんの窓口」では、民間の介護保険に関する質問や見積もりについて、何度でも無料で相談できます。また、保険だけではなく、資産運用の相談も可能です。将来の介護に関する費用負担に不安がある場合は、ぜひ「ほけんの窓口」へご相談ください。
監修者プロフィール
原 絢子
日本FP協会 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
自分で保険の見直しを行ったのをきっかけに、お金の知識を身につけることの大切さを実感し、ファイナンシャルプランナーとして活動を始める。モットーは「自分のお金を他人任せにしない」。一人でも多くの人がお金を味方につけて、自分の思い描く人生を歩んでほしいと、マネーリテラシーの重要性を精力的に発信している。FPサテライト株式会社所属FP。