【2024年】介護保険法改正・介護報酬改定の変更点をわかりやすく解説

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介護保険法は、制定以来、定期的に見直しが行われています。2024年度施行の法改正では、従来には見られなかったいくつかの変更点がある一方で、議論はされたものの見送られた内容もあります。

介護保険法の改正は、現在、公的介護保険サービスを利用している人だけではなく、将来、利用するかもしれない人にとっても、重要なトピックです。2024年度施行の介護保険法改正によって、何がどのように変わったのでしょうか。

ここでは、過去の法改正の内容にもふれながら、2024年度施行の介護保険法の改正ポイントを解説していきます。

介護保険法とは?

介護保険法とは、公的介護保険(以下、介護保険)を運用するための法律です。

介護保険は、社会全体で介護を支えるために市区町村が運営する公的な保険制度で、40歳以上の人に加入義務があります。介護保険の加入者(被保険者)は介護保険料を納め、要介護状態になった時には、1~3割の自己負担で所定の介護サービスを受けることができます。この介護保険制度におけるさまざまなルールを定めているのが、介護保険法です。

介護保険法が改正される理由

介護保険法が施行されたのは、介護保険制度がスタートした2000年です。それ以来、介護保険法は改正を繰り返してきました。介護保険法が改正される理由は、介護の現状を踏まえ、社会のニーズに合わせた制度に整備していくためです。

介護保険制度が創設されて20年以上が経ちましたが、高齢者を取り巻く環境や介護に関する課題は年々変化しています。さらに、国内における高齢化は、今後ますます加速します。このような変化に対応していくために、介護保険法は定期的な見直しが必要なのです。

これまでの介護保険法の改正内容

2000年に施行された介護保険法は、2005年以降3年ごとに改正されています。これまでの改正内容を以下にまとめました。

■介護保険法の主な改正内容の経緯

改正された年
(翌年施行)
主な改正内容
2005年
  • 介護予防の重視
  • 地域包括支援センターの創設
  • 小規模多機能型居宅介護等の地域密着サービスの創設
2008年
  • 介護サービス事業者に対する法令遵守等の業務管理体制整備の義務付け
  • 休止や廃止の事前届出制への移行
2011年
  • 24時間対応の定期巡回・随時対応サービス、複合型サービスの創設
  • 介護サービスでの医療的ケアの制度化
2014年
  • 地域医療介護総合確保基金の創設
  • 在宅医療・介護の連携等、地域支援事業の充実
  • 低所得の第1号被保険者に対する保険料軽減割合の拡大
2017年
  • 自立支援や重度化防止の制度化
  • 介護医療院の創設
  • 特に所得の高い層の利用者負担割合を2割から3割へ
2020年
  • 地域住民に対する包括的な支援体制の構築
  • 医療や介護のデータ基盤の整備

※出典:「介護保険制度の概要」(厚生労働省)P.23
https://www.mhlw.go.jp/content/000801559.pdf)を基に作成

2024年度施行の介護保険法改正は、団塊の世代が75歳に達する2025年を前にした、最後の改正となります。また、高齢者人口がピークを迎えるとされる2040年頃に向け、85歳以上人口割合の増加や生産年齢人口の急減といった、人口構造および社会環境の変化が予想されています。

2024年度の介護報酬は1.59%引き上げ

介護に関する状況の変化に応じて、介護報酬も随時改定が行われています。介護報酬とは、事業者が利用者(要介護者または要支援者)に介護サービスを提供した際、その対価として支払われる報酬のことです。これまでの介護報酬の改定は以下のとおりです。

■介護報酬改定の経緯

改定時期改定率
2003年度-2.3%
2006年度-0.5%
2009年度3.0%
2012年度1.2%
2014年度0.63%
2015年度-2.27%
2017年度1.14%
2018年度0.54%
2019年度2.13%
2021年度0.70%

※出典:「介護保険制度の概要」(厚生労働省)P.24
https://www.mhlw.go.jp/content/000801559.pdf)を基に作成

2024年度の介護報酬改定率は、1.59%の引き上げとなりました。引き上げられた1.59%の内訳は、介護職員の処遇改善分が0.98%、その他の改定率が0.61%となっています。

また、1.59%の引き上げとは別に、処遇改善加算の一本化による賃上げ効果や、光熱水費の基準費用額の増額による介護施設の増収効果で、0.45%相当の引き上げが見込まれています。つまり、介護報酬改定による1.59%と、その他の0.45%を合計して、2.04%の引き上げです。

介護報酬改定の実施は、サービスの種類によって、2024年4月と同年6月に分かれます。訪問看護や居宅療養管理指導、通所・訪問リハビリテーションといった医療(診療報酬改定)と関係するサービスは2024年6月の施行です。それ以外の訪問介護や通所介護、福祉用具貸与等のサービスについては、例年通り4月1日に報酬改定が施行されました。

2024年度施行の介護保険法改正のポイント

ここからは、2024年度施行の介護保険法改正のポイントについて解説していきます。大きな改正ポイントは、以下の3つです。

介護情報を管理するシステム基盤の整備

介護保険法の改正に際し、介護情報を一元的に管理するシステム基盤を整備することが決定されました。これにより、自治体・利用者本人・介護事業所・医療機関が、本人の同意のもと、必要な介護情報を共有して利用できる仕組みが整えられます。

2024年度施行の介護保険法改正にあたり、基本的な視点のひとつとされていたのが、地域包括ケアシステムの深化・推進です。介護情報基盤の整備は、自治体や介護事業所、医療機関が一体となって必要な介護サービスを切れ目なく提供できるような、地域包括ケアシステムの推進を目指すものです。

また、介護事業者が各自治体に届け出る提出書類の様式を一本化し、電子申請に統一することが示されました。システム基盤の整備とともに、介護行政のDXを後押しします。

財務諸表の公表を義務化

2024年4月から、介護事業者に対して、財務諸表等の経営状況の公表が義務付けられました。すべての介護事業者は、原則として事業所または施設単位で、財務状況を都道府県知事に届け出ることになります。また、国がそれらの情報を収集・整備し、属性等によってグルーピングした分析結果を公表する制度が創設されます。財務諸表の公表義務化は、介護サービス事業者の財務状況を「見える化」し、各事業所等の経営状況の調査・分析に基づいた支援策の検討を行うことが目的です。

介護予防支援の実施を居宅介護支援事業所にも拡大

要支援者を対象とした介護予防支援について、地域包括支援センターだけではなく、居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)も市町村からの指定を受けて実施できるようになることも、改正ポイントのひとつです。指定を受けた居宅介護支援事業所は、市町村や地域包括支援センターと連携しながら介護予防支援を実施します。地域住民の複雑化・複合化したニーズへの対応や、認知症高齢者の家族を含めた家族介護者支援の充実等、地域包括支援センターが担う業務は増大傾向です。このような地域包括支援センターの業務の一部を居宅介護支援事業所が担うことで、地域包括支援センターの負担を軽減し、より適切な支援体制の整備を図ります。

2024年度施行の介護保険法改正で見送られた内容

上述したような改正が行われる一方で、見直しが検討されたものの、2024年度施行の介護保険法改正が見送られた内容もあります。改正が見送られたのは、「複合型の新介護サービスの創設」と「ケアプランの有料化」の2点です。2024年度施行の改正で見送りになった事項は、次回の2027年度の介護保険法改正で結論が出される予定になっています。

複合型の新介護サービスの創設

2024年度施行の介護保険法改正で見送られた内容のひとつが、複合型の新介護サービスの創設です。在宅サービスの課題や介護ニーズの多様化等を踏まえ、訪問介護や通所介護といった複数の在宅サービスを組み合わせて一体化した、複合型サービスの新設が提言されていました。しかし、サービスの質の低下や事業所の撤退等が懸念される上、「制度がさらに複雑化する」「利用者の意向より事業所の都合が優先されるのでは」という反対の声が多く上がったことから、2024年度施行の介護保険法改正では見送ることが決定しました。

ケアプランの有料化

2024年度施行の制度改正では、介護保険のサービス利用時に必要なケアプランの作成を有料化することも検討されていました。現在、在宅サービスのケアプランの作成は全額が保険給付なので、利用者の負担はありません。一方で、施設サービスにおけるケアマネジメントでは利用者負担が発生します。そのため、国は公平性を保つために、ケアプランの有料化を提言していました。

ケアプランの有料化は、これまでも何度も議論されてきた問題です。しかし、「利用者が権利を主張しトラブルになりかねない」「利用料管理の業務負担が増える」「介護サービスが必要であるにもかかわらず利用控えが起こる可能性がある」等の反対意見が多く、2024年度も見送りとなりました。

介護保険法の改正内容を理解しておこう

介護保険法は公的介護保険の運用にかかわるルールを定めた法律であり、定期的に見直しが行われています。改正によって内容にどのような変更点が生じるのかを把握しておくことは、非常に大切です。特に日本では、今後さらに高齢化が進みます。介護保険法の改正により、実際に介護保険サービスを利用することになった時、自己負担割合が増加する可能性も考えられるでしょう。

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監修者プロフィール

原 絢子
日本FP協会 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

自分で保険の見直しを行ったのをきっかけに、お金の知識を身につけることの大切さを実感し、ファイナンシャルプランナーとして活動を始める。モットーは「自分のお金を他人任せにしない」。一人でも多くの人がお金を味方につけて、自分の思い描く人生を歩んでほしいと、マネーリテラシーの重要性を精力的に発信している。FPサテライト株式会社所属FP。

原 絢子
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