医療保険の見直しは必要?見直しの注意点やタイミングを解説
入院や手術等のリスクに備え、経済的な負担を軽減する目的で加入する民間の医療保険ですが、何年も前に医療保険に加入したまま、一度も見直しをしていないという人もいるかもしれません。必要な保障はライフステージによって変わる上、医療技術の進歩に合わせて医療保険の保障内容も変化しています。定期的に医療保険の見直しをすることで、より自分に合った保障で備えられるでしょう。
ここでは、民間の医療保険に見直しが必要とされる理由や、医療保険の見直しに適したタイミング、見直しにあたって意識したいポイントや注意点等について解説します。
医療保険の見直しが必要な理由
医療保険は、一度加入してからそのままの状態にするのではなく、必要に応じて見直すことが大切です。医療保険の見直しが必要な背景には、主に次のような理由があります。
必要な保障の変化への対応
医療保険で必要な保障は、年齢やライフステージに応じて変化していきます。例えば、年齢が上がることによる病気リスクの上昇や、結婚や子どもが生まれることによる家族構成の変化等が挙げられます。このような変化に対応するには、医療保険の定期的な見直しが必要です。
医療の進歩への対応
現代の医療技術は日々進歩を続けています。以前は長期入院が必要だった治療でも、現在は日帰りや短期入院で済むという場合もあるでしょう。例えば、入院や手術での治療が中心だったがん治療は、今は通院による抗がん剤治療や放射線治療が主流になりつつあります。加入している医療保険が、長期入院に備えた古いタイプのままだと、通院治療に十分な保障を受けられないケースもあるかもしれません。このような変化に合わせて、医療保険も見直してアップデートしていく必要があります。
ライフステージの変化への対応
現在加入している医療保険の保障内容が、ライフステージの変化によって過剰になってしまっていることがあります。例えば、家計を支える立場の人が子育て中のタイミングで保障を手厚くしたものの、現在は子どもが独立して大きな保障は必要ない、というようなケースです。このような場合は、状況に合わせて保障をスリムにすると、月々の保険料が減り、結果として経済的な負担が軽減されます。
医療保険を見直すタイミング
医療保険の見直しには、生活が変化した時や保険の更新時等、適したタイミングがあります。見直しは次のようなタイミングで行うとよいでしょう。
ライフステージが変化した時
医療保険を見直すタイミングのひとつが、ライフステージに変化があった時です。具体的には、就職や結婚、マイホーム購入、子どもの誕生、子どもの独立、定年退職等です。生活に大きな変化があった時は、その都度に医療保険を見直し、必要な保障が不足していないか、または保障が過剰になっていないかを確認しましょう。
定期型の医療保険の更新前
定期型の医療保険に加入している場合は、更新前のタイミングでの見直しがおすすめです。定期型の医療保険は、年単位または年齢で、保険期間があらかじめ決まっています。契約時に定められた保険期間が満了となる場合、更新をするか、別の医療保険に加入し直すかを検討しなければなりません。定期型の医療保険は一般的に、更新時の年齢で保険料が再計算されるため、同じ保障内容でも今までより保険料が高くなります。しかし、見直しをすることで、他の商品との保険料の比較や、保障内容の確認も行うことができます。満了の際には、保険の更新を検討するだけでなく、内容の見直しも行いましょう。
加入して年数が経っている時
医療保険に加入してから年数が経っている場合も、見直しが必要です。特に、若い頃に加入した終身型の医療保険をそのままにしているというような場合、保障内容が最新の医療技術等に合っていない可能性があります。また、加入当時と現在では年齢や生活環境が変わっているため、必要な保障が足りていないかもしれません。一度見直しをして、最新の医療や生活環境に合った保障を検討するとよいでしょう。
医療保険を見直す方法
医療保険の見直しというと、契約中の医療保険を解約して、新しい保険に加入することをイメージする人が多いかもしれません。しかし、保険会社や保険商品によっては、保険自体の解約ではなく、特約の追加や解約、保障額の変更等の方法で見直しをできる場合があります。以下に、見直しをしたいケースごとに対応できる方法を見ていきましょう。
保障が過剰な場合
契約内容の保障が過剰だと感じている場合は、主契約や特約の保障額を減らす減額(保障の一部解約と同じ扱いになる)、特約の解約、複数の医療保険に加入している場合は不要な保険の解約等の方法があります。過剰な分の保障を軽くして、必要な契約を継続することが可能です。
保障が不足している場合
必要な保障が不足している場合は、主契約を継続したまま特約を付帯する中途付帯や、今の医療保険に加えてもうひとつ別の医療保険へ加入することで保障を充実させる方法等があります。契約中の医療保険を解約せずに、保障を追加することが可能です。
保険料が負担になっている場合
保険料の払込みが負担になっている場合は、保障が過剰な場合と同様に、主契約や特約の減額、特約の解約、複数の医療保険に加入している場合は不要な保険の解約等で、負担を軽減することができます。
医療保険を見直す際のポイント
医療保険を見直す際には、確認しておきたいいくつかのポイントがあります。自分に合った医療保険を選ぶためにも、次のポイントを意識して検討するとよいでしょう。
定期型と終身型の特徴を理解して選ぶ
医療保険は、保険期間の違いによって、定期型と終身型に分かれます。定期型の医療保険は、あらかじめ定められた一定期間のみ保障される医療保険です。保険期間は、10年や15年というように年単位で期間を決める年満了タイプと、年齢で期間を決める歳満了タイプがあります。加入時の年齢が若いほど保険料を抑えられますが、更新時にはその時点での年齢で保険料が再計算されるため、更新するごとに保険料が高くなるケースが一般的です。
一方、終身型は保障が一生涯続き、契約内容を変更しない限り保険料は変わりません。保険料の払込方法は、生涯にわたって保険料を払込み続ける終身払と、「60歳まで」のように期間を限定して保険料を払込む有期払があります。ただし、どちらの場合も、加入当初の保険料は定期型に比べて割高になる傾向があります。
定期型と終身型の特徴を理解し、年齢やライフステージの変化に応じて適したものを選ぶことが大切です。例えば、まだ子どもが小さい場合等、ライフステージが変わる可能性があるうちは定期型で保障を手厚くし、ある程度の年齢になって保障の見直しが不要になったら終身型を選ぶ、というのもひとつの方法になります。
また、定期型と終身型の契約は、どちらか一方だけに限定する必要はありません。終身型の保障をベースとして継続しつつ、より保障を手厚くしたい時期は定期型を上乗せする等、組み合わせて契約をすることも可能です。
掛け捨て型と貯蓄型のどちらが合っているか
医療保険は、貯蓄性の有無によって掛け捨て型と貯蓄型に分類することができます。掛け捨て型医療保険は、保険期間の途中で解約しても解約返戻金はありません。また、何事もなく満期を迎えた場合も、それまで払込んだ保険料は返ってこないことがほとんどです。その分、月々に払込む保険料は、貯蓄型に比べて割安です。
一方で貯蓄型は、保険期間の途中で解約すると解約返戻金を受取ることができます。保険商品によっては、契約から所定の年数が経過すると、祝金や還付金を受取れるものもあります。ただし、毎月の保険料は保障が同程度の掛け捨て型よりも割高です。
以前の終身型医療保険は、多くが貯蓄型でしたが、最近では、保険料が割安な掛け捨て型かつ終身型の医療保険が主流になりつつあります。保険商品の選択肢が多く保険料も割安な掛け捨て型か、保険料が割高ではあるものの病気やケガ等がなくてもお金を受取れる貯蓄型か、どちらが自分に合うかを考えて選びましょう。
入院保障が合っているか
医療保険を検討する上で必ずチェックしておきたいのが、入院保障の内容です。
医療保険では、1回の入院につき何日分まで入院給付金を受取れるかが決まっています。従来は、1入院あたりの支払限度日数を120日としている医療保険が多くありましたが、最近では60日とする保険商品が増えているため確認が必要です。もし長期入院への保障が不要であれば、支払限度日数を短くすることで、保険料を抑えられるかもしれません。なお、一般的には、同じ病気による180日以内の再入院は、1回の継続した入院として計算されるため、あらかじめ確認しておきましょう。
一方で、脳卒中等の脳血管疾患の平均入院日数は77.4日となっており、支払限度日数が60日では上限を超えてしまう可能性があります。医療保険で備えたいリスクの優先度を考え、自分が不安に感じる病気の入院をカバーできる医療保険を選ぶことが重要です。
先進医療特約が付帯されているか
医療保険の見直しをする際には、先進医療特約が付帯されているかどうかをチェックしておきましょう。古いタイプの医療保険の場合、先進医療特約が付帯されていないケースがあります。先進医療は公的医療保険の適用外であり、一定額以上の医療費が払戻される高額療養費制度も先進医療に関わる部分は適用できません。特に、がん治療における先進医療は、費用が高額になりがちです。いざという時の経済的負担が非常に大きくなる可能性があるため、先進医療での治療にしっかりと備えたい場合は確認が必要です。
三大疾病への保障が十分か
三大疾病とは、「がん(悪性新生物)」「心疾患」「脳血管疾患」のことです。三大疾病は、日本人の死因の上位を占めるばかりではなく、罹患した場合に治療が長期化しやすく、それに伴って医療費の負担が大きくなるという傾向があります。また、治療のために仕事を休まなければならない場合、収入が下がってしまうかもしれません。
三大疾病のリスクは、年齢を重ねるほどに高まっていきます。若い時に加入した医療保険の場合、三大疾病に対する保障が不十分で、リスクをカバーできない内容になっている可能性もあります。医療保険を見直す際には、三大疾病への保障がしっかり備わっているかどうかも確認しておきましょう。健康状態が変わってからでは希望どおりの保障を選べない可能性も出てくるため、健康なうちに見直しておくのがおすすめです。
医療保険を見直す際の注意点
医療保険を見直す際には、保険料の問題や加入自体ができるかどうか等の注意点があります。見直しの際には、以下の点をよく確認しておきましょう。
解約返戻金が少なくなる可能性がある
貯蓄型の医療保険を途中解約した時に受取れる解約返戻金は、払込保険料の総額よりも少なくなることが一般的です。さらに、解約時期によっては、当初の想定よりも受取れるお金が少ない可能性もあるでしょう。また、医療保険のなかには解約返戻金がないものも多いため、解約を決める前に、解約返戻金の有無や金額についてしっかり確認しておきましょう。
保険料は年齢に応じて上昇する
一般的に医療保険は、契約時の年齢が上がるほど保険料も高くなります。若い時に加入した医療保険を見直し、別の医療保険に新たに加入する場合、同程度の保障内容でも保険料の負担が大きくなることが考えられます。必要な保障と家計のバランス等を考慮し、無理のない保険料の額を決めましょう。
新しい医療保険に加入できない可能性がある
医療保険に加入する時には、契約時点での健康状態等を保険会社に告知する必要があります。若い頃は問題なく加入できた医療保険でも、年齢を重ねた状態で希望どおりの保障が受けられるとは限りません。特に、持病や既往歴がある場合は、新しく医療保険に加入するのが難しいことがあります。もし審査の結果、新たに医療保険に加入できなかった時、すでに前の医療保険を解約していたら、無保険状態になってしまいます。そのような事態を避けるために、新しい医療保険に加入できることを確認してから、前の保険を解約するようにしましょう。
現在の状況に合わせて医療保険を見直そう
医療保険は、生活環境や家族構成等に合わせて、定期的に見直しをすることが大切です。加入してから年数が経過している医療保険は、現在の自分の状況に合っていない可能性があります。ライフステージが変化するタイミング等で保険を見直し、その時に必要な保障を検討しましょう。
ただ、医療保険を見直そうとすると、現在の保険を解約するべきか、必要な保障をどうやって選べばいいのか等、さまざまな疑問が生じがちです。医療保険選びに迷ったら、保険の専門家に相談するのがおすすめです。「ほけんの窓口」では、保険のプランに関するご相談やお見積もりが、何度でも無料でご利用いただけます。医療保険の加入や見直しを検討する際は、ぜひ「ほけんの窓口」へご相談ください。
監修者プロフィール
黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。FPサテライト株式会社所属FP。