子どもに医療保険は必要ない?
不要といわれる理由と加入メリットを解説
不要といわれる理由と加入メリットを解説

子どもであっても、民間の医療保険(以下、医療保険)に加入できます。ただ、公的医療制度が充実していることから、「子どもに医療保険は必要ないのでは?」と考える人もいるかもしれません。
果たして、本当に子どもに医療保険は必要ないのでしょうか。また、子どもが医療保険に加入した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、子どもにとっての医療保険の必要性や、医療保険に加入するメリットの他、子どもの医療保険の選び方についても解説します。
この記事のポイント
- 子どもは入院リスクが比較的低く、公的医療制度が充実しているため、医療保険は不要といわれることがある
- より手厚い保障を準備するために、子どもの医療保険を検討する人もいる
- 子どもが医療保険に加入するメリットは、保険料を抑えつつ、公的医療保険ではカバーできない費用に備えられること
- 子どもの医療保険を選ぶ際は、保障内容、保険金額、保険期間、保険料を確認することが大切
子どもに医療保険は必要ないといわれる理由
「子どもに医療保険は必要ない」という意見を聞いたことがあるかもしれません。その理由には、子どもは入院リスクが比較的低いことや、公的医療制度が充実していることが挙げられます。詳しく見ていきましょう。
子どもの入院リスクは他の年代と比べて低い
子どもの入院リスクは、他の年代と比べて低く、平均入院日数も短い傾向があります。厚生労働省の「令和5年(2023)患者調査の概況」によると、0歳児の入院での受療率はやや高いものの、それ以降の幼児期や学童期は、大人よりも入院する割合が低くなっています。また、年齢階級別の平均在院日数を見ても、全年代のなかで入院日数がもっとも短いのは、0~14歳です。
このように、子どもは大人と比べて入院リスクが低く、入院日数も短めであることから、子どものための医療保険は不要と考える人もいるのです。
※出典:厚生労働省「令和5年(2023)患者調査の概況」P.26,29
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/index.html
公的医療制度が充実している
公的医療制度が充実していることも、子どもに医療保険はいらないといわれる理由のひとつです。日本ではすべての人が何らかの公的医療保険に加入しており、子どもの場合、医療費の自己負担は就学前までは2割、就学後は3割です。さらに、自治体による子どもの医療費を対象にした助成制度もあり、自己負担分についても、一部または全額が助成されます。
例えば、東京都の場合、就学前までの子どもに対しては「乳幼児医療費助成制度(マル乳)」、義務教育中の子どもに対しては「義務教育就学児医療費助成制度(マル子)」、高校生等の子どもに対しては「高校生等医療費助成制度(マル青)」があり、0~18歳までの子どもの医療費について、助成を受けられます。
公的医療制度が充実していることを理由に、「子どもは医療保険に加入しなくてもいい」と考える人もいるのでしょう。
子どもにも医療保険は必要と考える人もいる
子どもに医療保険は不要という意見がある一方で、「子どもにも医療保険は必要」と考える人もいます。公益財団法人生命保険文化センターの「2024(令和6)年度 生命保険に関する 全国実態調査<速報版>」によると、2024年の子どもの生命保険に関して、加入・追加加入意向のある保障内容は「病気やケガの治療や入院にそなえるもの」がもっとも多く、61.5%を占めています。
子どもの入院リスクが比較的低く、公的医療制度が充実していても、より手厚い保障を準備しておきたいというニーズがあると考えられるでしょう。
※出典:公益財団法人 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する 全国実態調査<速報版>」P.105
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r6/2024sokuhou.pdf
子どもが医療保険に加入するメリット
子どもの入院リスクは他の年代に比べて低く、自治体から医療費の助成も受けられます。にもかかわらず、子どもにも医療保険は必要と考える人がいるのは、なぜでしょうか。子どもが医療保険に加入することで、主に以下のようなメリットが得られます。
公的医療保険ではカバーできない費用に備えられる
子どもが医療保険に加入する大きなメリットは、公的医療保険ではカバーできない費用に備えられることです。子どもが病気やケガ等で医療費が発生した時、公的医療保険が適用されれば、自己負担は2割または3割です。さらに、多くの自治体では子どもの医療費を助成する制度があり、自己負担が軽減されることもあります。
しかし、入院や通院にかかるすべての費用に公的医療保険が適用されるわけではありません。
例えば、入院時の差額ベッド代や保護者の付き添いにかかる費用等は、公的医療保険の適用外です。また、子どもに入院や手術、あるいは定期的な通院が必要になった場合、保護者が仕事を休まなければならず、収入が減少する可能性もあります。
子どもが医療保険に加入していれば、こうした経済的な負担を減らすことができます。
早く加入することで毎月の保険料を抑えられる
基本的に、医療保険は、若く健康なうちに加入したほうが毎月の保険料の負担を抑えられます。例えば、子どものうちに終身型の医療保険に加入しておけば、契約内容を変更しない限り、保険料は一生涯変わりません。
また、子どものうちは健康でも、大人になってから持病が発覚する可能性もあります。その時になって医療保険に加入したいと思っても、希望どおりの保険商品を選べなかったり、保険料が高くなってしまったりするかもしれません。
契約を子どもに引き継げる保険商品を選んで加入しておけば、名義変更等の手続きを行うことで、親から子どもへ契約を移せます。そうすれば、子どもが大人になってからも、手頃な保険料で保障を継続できます。
医療費助成制度の対象外になっても備えられる
子どもが医療保険に加入するメリットとして、医療費助成制度の対象外になっても医療費に備えられることも挙げられます。自治体の医療費助成を受けられる年齢は、「就学前まで」「小学生まで」「中学生まで」「高校生まで」等、上限があります。また、自治体によっては、医療費助成にあたって保護者の所得制限を設けている場合も少なくありません。
子どもの年齢が上がったり保護者の所得が増えたりして、医療費の助成が受けられなくなると、医療費負担が大きくなる可能性もあります。子どもが医療保険に加入していれば、医療費助成制度の対象外となっても、病気やケガのリスクに備えることができます。
子どもの医療保険の選び方
子どもの医療保険を選ぶ際には、いくつかの意識したいポイントがあります。子どもが医療保険へ加入する際には、以下の点をよく確認しておきましょう。
保障内容・保険金額
子どもの医療保険を選ぶ際には、自治体の医療費助成制度の内容を確認した上で、必要な保障内容や保険金額を決めることが大切です。一般的に、保障内容や保険金額を充実させるほど、毎月払込む保険料は高くなります。子どもの医療費に対しては自治体からの助成もあるため、お住まいの自治体の助成の内容や対象年齢等も確認しながら、必要な保障を考えましょう。
学資保険に加入している場合、特約として子どもの医療保障を付加する方法もあります。
保険期間
子どもの医療保険を選ぶ際には、保険期間も重要な検討事項のひとつです。医療保険は、保険期間によって「終身型」と「定期型」の2種類に分けられます。
終身型は保障が一生涯続き、契約内容を変更しない限り保険料は変わりません。終身型の保険料の払込方法は、一生涯にわたって保険料を払込む終身払と、一定期間で払込みが終了する有期払があります。
それに対して、定期型は、契約時に定めた一定期間のみ保障される保険です。定期型の保険を更新する際は、その時の年齢等に基づいて保険料が再計算されるため、一般的に更新ごとに保険料が高くなります。多くの場合、保険料の払込期間は保険期間と同じです。
子どもに一生涯の医療保障を用意したい場合は、終身型を選ぶことをおすすめします。子どものうちに医療保険に加入すれば、将来的に毎月の保険料の負担を抑えながら、一生涯の医療保障を子どもに渡すことができます。一方で、手厚い保障が必要な時期を重点的にカバーしたいなら、定期型の医療保険がおすすめです。
加入目的や保険料を確認し、保険期間を決めるといいでしょう。
保険料
子どもの医療保険を選ぶ際、毎月の保険料を家計の負担にならない範囲で設定することも重要です。保障内容を充実させればさせるほど、毎月払込む保険料は高くなります。子どものために医療保険に加入しても、保険料の払込みが普段の家計を圧迫してしまっては本末転倒です。
子どもの医療費に対しては自治体からの助成もあるため、保障内容と保険料のバランスを考えた上で、無理なく払込みを続けられる保険料を設定しましょう。
特に、将来的に保険契約を子どもに引き継ぎ、子ども自身が保険料の払込みを続ける可能性がある場合は、慎重に金額を設定する必要があります。
子どものために医療保険に加入するか迷ったら保険の専門家に相談しよう
子どもが医療保険に加入するかは、家庭によって考え方が異なります。なかには、「子どものうちは医療費助成制度があるから医療保険はいらない」という人もいるでしょう。その一方で、子どもが医療保険に加入すると、公的医療保険ではカバーできないリスクに備えられたり、将来、毎月の保険料負担を抑えられたりする等のメリットがあります。
子どもの医療保険について迷う場合は、保険の専門家に相談するのがおすすめです。「ほけんの窓口」では、保険のプランに関する質問や見積もり等が、何度でも無料で相談できます。子どもの医療保険に関する疑問や悩みも、ぜひ「ほけんの窓口」へご相談ください。
- ※本コラムは、2025年5月現在の社会保障制度の概要についての説明です。
子どもの医療保険についてよくある質問
子どもの医療保険について、よく聞かれる疑問をまとめました。それぞれの質問について解説していますので、参考にしてください。
- 子どもに医療保険は必要ないといわれるのはなぜですか?
- 子どもに医療保険は必要ないといわれる理由は、他の年代に比べて入院リスクが低く、入院日数も短い傾向があるためです。また、自治体による医療費助成制度等、公的医療制度が充実していることも、子どもには医療保険は不要といわれる理由のひとつです。
- 子どもが医療保険に加入するメリットは何ですか?
- 子どもが医療保険に加入することで、入院時の差額ベッド代や保護者の付き添いにかかる費用等の、公的医療保険ではカバーできない経済的負担に備えられます。また、子どものうちに医療保険に加入すると、毎月の保険料負担を抑えられる点もメリットのひとつです。さらに、自治体の医療費助成制度の対象年齢を超えた場合や、所得制限等で助成の対象外となった後の病気やケガのリスクにも備えられます。
- 子どもの医療保険はどのように選んだらいいですか?
- 子どもの医療保険を選ぶ際には、自治体の医療費助成制度の内容を確認した上で、保障内容や保険金額、保険期間を検討する必要があります。また、必要な保障内容と家計の状況等を踏まえて、無理のない範囲での保険料を設定することも大切です。
- 子どもに一生涯の医療保障を用意したい場合は?
- 子どもに一生涯の医療保障を用意したい場合は、終身型の医療保険を選ぶことをおすすめします。子どものうちに医療保険に加入すれば、将来的に毎月の保険料の負担を抑えながら、一生涯の医療保障を子どもに渡すことができます。ただし、保険料の設定は、子ども自身が毎月払込みを続けることを前提として、慎重に設定する必要があります。
監修者プロフィール
原 絢子
日本FP協会 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
自分で保険の見直しを行ったのをきっかけに、お金の知識を身につけることの大切さを実感し、ファイナンシャル・プランナーとして活動を始める。モットーは「自分のお金を他人任せにしない」。一人でも多くの人がお金を味方につけて、自分の思い描く人生を歩んでほしいと、マネーリテラシーの重要性を精力的に発信している。FPサテライト株式会社所属FP。

