NISAで確定申告は必要?例外や手続き方法、注意点を解説

NISAで利益や損失が出た場合に、確定申告が必要なのか気になっている人もいるかもしれません。原則として確定申告は不要ですが、場合によっては確定申告が必要です。
この記事ではNISAで確定申告が不要な理由や例外として確定申告が必要となるケース、確定申告の方法等を解説します。NISAの税金に関して知っておきたいポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
NISAってどんな制度?
NISAは個人の資産形成をサポートする観点から、少額からでも投資を行えるように2014年1月にスタートした「少額投資非課税制度」のことです。
株式や投資信託の運用で利益を得た場合、本来は20.315%の税率で税金がかかりますが、専用のNISA口座を開設し、その口座を利用して購入した金融商品の運用によって得られた利益は非課税です。つまり、通常の投資よりも効率よく運用でき、運用成績が好調なら多くの運用益を得られます。
NISAには、成長投資枠とつみたて投資枠という2つの非課税投資枠があり、成長投資枠は一部の除外銘柄以外の株式や投資信託、ETF、REIT等が対象です。つみたて投資枠では金融庁が定める基準を満たす投資信託、ETFの購入が可能です。2024年1月に制度が刷新され、制度の恒久化・非課税保有期間の無制限化・年間投資上限額の拡大等が行われ、中長期にわたって資産運用を続けやすくなりました。
NISAの確定申告は原則不要
NISAで利益を得たり、損失が発生したりした場合、一部の例外を除いて確定申告は不要です。そもそも確定申告とは1月1日~12月31日の1年間の所得から所得税額を計算し、翌年の決められた期間に税務署へ申告・納税する手続きです。NISAで得た利益は非課税、つまり課税の対象とならないため原則として申告する必要はありません。
NISAで確定申告が必要な場合とは?
NISA制度を利用して利益が発生しても、原則として確定申告の手続きは不要です。しかし、例外として以下の2つに該当するケースでは確定申告が必要となる場合があります。
分配金受取り方式が「株式数比例配分方式」以外の場合
NISA口座で株式およびETF、REITを購入し、これらの配当金および分配金の受取り方法として以下4つの方法があります。
株式数比例配分方式 | 証券口座で受取る方法 |
---|---|
登録配当金受領口座方式 | 指定した銀行口座で保有するすべての銘柄の配当金・分配金を受取る方法 |
個別銘柄指定方式 | 銘柄ごとに指定した銀行口座で配当金・分配金を受取る方法 |
配当金領収証方式 | 銘柄ごとに送られてくる配当金領収書と引き換えに郵便局やゆうちょ銀行等の窓口で受取る方法 |
このうち、NISA口座を利用して非課税になるのは「株式数比例配分方式」を選んだ場合だけです。つまり、NISAのメリットを活かすためには、配当金や分配金の受取り方法を「株式数比例配分方式」にしなければなりません。
「株式数比例配分方式」以外を選択した場合、NISA口座を利用している場合でも課税対象となり、配当金や分配金を受取るときに税金が源泉徴収されます。すでに税金分が引かれているため、基本的に確定申告は不要ですが、以下の場合には確定申告が必要です。
- 配当控除の適用を受ける(総合課税を選択)
- 譲渡損失の損益通算や繰越控除をする(申告分離課税を選択)
課税所得金額が695万円以下の場合、確定申告をして配当控除を受けたほうが税金は少なくなります。源泉徴収される20.315%よりも低い税率が適用され、還付を受けられます。
損益通算とは、一定期間内の取引における利益と損失を相殺することです。例えば、ひとつの口座で利益を出しており、もうひとつの口座で損失を出している場合に利益と損失を相殺して利益を圧縮し、課税額を減らすことができます。繰越控除は損失分が相殺しきれない場合に残りの損失分を翌年以降に繰り越すことができ、損益通算や繰越控除を利用する場合には確定申告が必要です。
旧NISAの非課税期間が終了した後に払い出す場合
NISA制度は、2024年1月から非課税保有期間が無期限となりました。2023年までにNISA口座(旧NISA)で購入していた金融商品は、購入から5年(一般NISA)または20年(つみたてNISA)の非課税期間が終了するまで、そのまま旧NISA口座で運用を継続できます。しかし、旧NISA口座内の金融商品の非課税期間終了後も引き続き運用したい場合は、非課税期間終了時に売却しなければ自動的に課税口座(一般口座や特定口座)に払い出される仕組みです。課税口座に移管されてから得た利益は通常通り課税対象となり、確定申告が必要になる場合があります。
一般口座 | 確定申告が必要(※) |
---|---|
特定口座(源泉徴収なし) | 確定申告が必要(※) |
特定口座(源泉徴収あり) | 税金が源泉徴収されるため確定申告は不要 |
(※)投資による利益を含め、給与所得・退職所得以外の所得が20万円以下の場合等、一定の条件を満たしていれば確定申告が不要になる場合があります。なお、特定口座(源泉徴収あり)であっても、損益通算や繰越控除をしたい場合は確定申告が必要です。
確定申告の方法
NISAを利用していて確定申告が必要になっても慌てずに済むように、確定申告の方法を知っておきましょう。
必要な書類を用意する
まずは、確定申告に必要な書類を用意しましょう。必要となる書類は以下のとおりです。
- 確定申告書
- 株式や投資信託等の年間取引の明細がわかるもの
- 給与所得や公的年金の源泉徴収票等、収入がわかるもの
- 控除の適用を受けるための各種控除証明書
- マイナンバーカード(または通知カード等)
確定申告書は国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。確定申告書はいくつか種類がありますが、投資の利益を申告する場合は、「申告書の第一表と第二表」、「申告書第三表(分離課税用)」を使用します。最寄りの税務署の窓口で受取ることも可能です。
また、申告書にはマイナンバーの記載が必要となるため、マイナンバーがわかるものを手元に用意しましょう。
確定申告書を作成する
確定申告書を作成していきます。いくつか作成方法があるため、自分がやりやすい方法で進めましょう。主な方法は以下のとおりです。
- ダウンロードした申告書を印刷または税務署でもらった申告書に手書きする
- 国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」で入力する
- 税理士へ依頼する
「確定申告書等作成コーナー」は、画面の指示にそって必要項目を入力するだけで確定申告書を作成できるため便利です。入力内容に基づいて税額も自動計算されるため、初めて確定申告する人にもわかりやすいでしょう。「確定申告書等作成コーナー」は、パソコン以外にスマートフォンでも利用できます。
確定申告書を提出する
確定申告書を作成したら、以下いずれかの方法で提出します。
- e-Tax
- 郵送
- 所轄の税務署窓口へ持参
e-Taxを利用すると「確定申告書等作成コーナー」で作成した申告書をオンラインでそのまま提出できます。ただし、e-Taxを利用するには「利用者識別番号(半角16桁の番号)」が必要になるため、事前にオンラインまたは所轄の税務署で取得しておきましょう。
所得税納付の手続きをする
確定申告書を提出したら、納付期限までに確定後の所得税を納付します。
所得税の納付期限は例年3月15日です。申告期限・納付期限が、土曜、日曜、祝日にあたる場合は翌日が期限となります。例えば、2024年分の所得にかかる所得税は、2025年3月17日(月)が確定申告および納付の期限です(3月15日と16日は土日のため、2025年は3月17日が期限となります。)。
納付方法は以下の方法から選べます。
- 口座振替(事前申込みが必要)
- インターネットバンキング(事前にe-Taxの利用開始手続きが必要)
- 「国税クレジットカードお支払いサイト」からクレジットカード納付
- 「国税スマートフォン決済専用サイト」からスマホアプリ納付
- コンビニ納付(QRコード)
- 納付書により銀行または所轄税務署の窓口で現金納付
なお、クレジットカード納付を利用する場合は納付税額に応じた決済手数料がかかることに注意が必要です。
NISAの税金に関して知っておきたいポイント
NISAを利用する際には、確定申告の要否以外にも、税金に関して知っておきたいポイントがあります。ここでは2つのポイントを説明します。
損益通算の対象にならない
NISA口座で運用している金融商品を売却した時に損失が生じても、課税口座(特定口座や一般口座)での運用分との損益通算ができません。これは、NISA口座内の所得(利益)は非課税であり、合算対象とすべき利益や損失はないものとみなされるためです。
扶養控除の判定に影響しない
納税者が所得税を計算する際、扶養控除や配偶者控除を利用したい場合には、対象となる子どもや親、配偶者の年間所得が一定以下でなければなりません。そのため、パートやアルバイトで所得を一定範囲内に抑えるケースは多いですが、これらの家族がNISA口座で得た利益は扶養控除や配偶者控除を判定する際の所得額に影響しません。納税者自身はもちろん、家族も安心してNISAで投資に取り組めます。
NISAと確定申告の関係を理解しておこう
NISAを利用して得た利益は、金額の大小にかかわらず非課税となるため確定申告は不要です。また、損失が出た場合でも、NISA口座内で取引をした分は損益通算や繰越控除を利用できないため、確定申告をする必要はありません。ただし、配当金・分配金を受取るために選んだ受取り方式や、旧NISA口座の非課税期間が終了した際の取扱い等によっては、例外的に確定申告が必要となる場合があります。確定申告に関して疑問や不安をお持ちの方は、専門家への相談も検討してみましょう。
「ほけんの窓口」では資産形成の専門家として、税金との関係も踏まえてNISAの上手な活用方法や資産形成等のご相談をお受けしています。まずはお気軽にご相談ください。
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