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仕事や家族、将来のこと、健康のこと。
何気ない日常生活の中で、ふと不安になることはありませんか。
そんなとき、そばで話を聞いてくれる人がいたら…。

「扉の向こうの体験記」は、『ほけんの窓口』のお店で
実際に起こったストーリーをもとに書き起こした物語です。

さあ、あなたもこの扉の向こうへ。

1st コーヒーのように 1st コーヒーのように

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コーヒーのように

コーヒーを飲んでいるうちに三十年が過ぎた。
夫と、互いにときどき返事を横着し、コーヒーカップに口を付けることで間を持たせ、何を進めるでもない雑談をする。

詩織はこういう時間が嫌いではない。
実は、夫のことも嫌いではない。詩織は自分の人生を結構気に入っている。
人生のことはあらかたひとりで決めてきた。
夫といちいち会議を開いて、意見をすり合わせてから事を運ぼうとすると時間がかかる。
だから、子どもの習い事や進路も、両親や義両親との付き合い方も、ほとんど相談せずに進めてきた。
このコーヒーカップだって詩織がひとりで買った。
「どれがいい?」「意見はある?」なんて、まだるっこしいし、気恥ずかしい。ただ、コーヒーのような雑談を、この先も三十年くらい続けていきたい。

だが、何十年かの雑談のためには、意味のある話をする一日も必要なのだった。 img

「さて、そろそろ出ないといけない時間だ」詩織は時計を見て立ち上がり、コーヒーカップを流しに置きにいった。 「ひとりで行ってきてよ。任せるよ。俺は今さら真面目な話なんてできやしない。テレビでも観ていようかな」夫はソファの上であぐらを組み、投げやりな言葉をよこした。 「私と話すんじゃなくて、ライフパートナーと話せばいいよ」
「ライフパートナー?」
「窓口の人だよ」
「自分の考えが定まっていないのに、他人と話せないだろ」
「曖昧なまま、話していいらしいよ。……ふう。じゃあいいよ、私が相談するの、黙って聞いていて」

詩織はため息をついた。
話し合わなくてもいい、ひとりで決められる、と思うようにしてきた。家計はすべて詩織が責任を持って運営してきた。

でも、いつだって不安だった。意見を聞きたい、と何度も思い、けれども「私が決めるしかない」と無理やり進めてきたのだ。 img

なんとかなだめすかして連れ出し、保険の相談ができる「ほけんの窓口」へ出かけた。

「ご来店ありがとうございます」

ライフパートナーが椅子を勧めてくれる。夫は座り、最初の三十分は本当に黙っていた。
しかし、何がきっかけだったのだろう、「俺の両親ももう年でね……」「子どもが大学生なんだけど、俺たちはどうなるんだろうねえ」夫が自身について喋り始めた。

二人だけでは切り替えられなかった。
たぶん、第三者が入ったことで、会話に変化が起きたのだろう。こんなふうにときどき真面目な話が交わせたら、雑談をさらに三十年、続けていけるような気が。

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2st 行ってらっしゃいの手紙 2st 行ってらっしゃいの手紙

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行ってらっしゃいの
手紙

母からたくさんの手紙をもらった。
母は夜勤のある仕事をしていたので、私が登校する時間にいないことがよくあり、「おはよう。行ってらっしゃい。
遅刻するなよー」なんて手紙に、母が考えた犬のキャラクターのイラストを添えてくれていた。
朝、それを父と一緒に笑いながら読んだ。

あの手紙は、どこにいったのだろう。
几帳面な父が丁寧にファイリングしていた記憶があるが、その父はもういないのだった。

私は今、あの頃の母よりも歳を取った。
私も母もひとり暮らしをしており、私から母に「おはよう」と通勤電車の中からSNSで送る。
昔の母は、母の言葉を私が必ず喜ぶと信じていて、自分から手紙を書いてくれたが、この頃の母は「現役で仕事をしている世代は、老後の親の言葉をうるさがる」と勝手に遠慮しているのか、私から言葉を送らないと何も言ってこない。 img

この頃は、マスクをして、手を洗い、人との距離を取ることが推奨され、親とも距離を取らなくてはならなくなった。
長い間、会っていない。
だから、SNSの「おはよう」には、安否確認のような気持ちも混じっている。
送信したあと、「そのうち、深い話もしないとな」と毎朝思う。
万が一の場合について。
保険はどうなっていたっけ……。
元来しっかり者の母だが、今の年齢では何もかもをひとりで判断したり記憶したりは難しいだろう。
でも、SNSや電話では込み入った話が難しい。

あ、オンラインで顔を見ながらだったら、できるだろうか。
二人だけだと気恥ずかしいが、友人はオンラインでライフパートナーという第三者に入ってもらって保険の相談をしたという。
私もやってみようかな。

週末の朝、タブレットの画面上で、母と私、そしてライフパートナーの三人が顔を合わせた。

「おはようございます」

そのライフパートナーは私と同じぐらいの年齢に見える人で、母はすぐに気を緩め、
「おはようございます。相談に乗ってくださるのね。そう、私もこの年だから片付けを進めているんだけど、ほら、お父さん、私が書いた手紙を、おせんべいの空き缶に入れて保存していたでしょ。ああいうのもね……」 img

母はぺらぺらと喋り始めた。

「それは取っておいて。大切だから。……あ、すみません。どうでもいいことを……」
私は頭を掻いたが、
「いえ、そういうお話、とても大切だと思います」
ライフパートナーは耳を傾けてくれた。

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3st ずっと主人公 3st ずっと主人公

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ずっと主人公

いにしえの物語では、主人公が交代していく。
恋愛が成就すると話がひと段落し、親から子どもに中心が移る。
子どもは、親の基盤を受け継ぐ。
主人公が代替わりする。

けれども現代では、子どもには子どもの生き方があって、親の価値観や仕事や人間関係や家などを子どもが継ぐということは、ほとんどなくなった。

そういうわけで由紀も、親に関係なく自分の人生を進め、大人になって子どもを産んだあとも主人公を降りられず、いまだに自分の人生の真ん中を歩いている。

由紀は目立ちたがり屋だったわけでも、自己主張が強かったわけでもない。
気弱な性格なのに、今の時代を生きているというだけで、親とはまったく似ていない人生になり、子どもに何かを託そうとは全然思わない暮らしになった。 img

「自分らしい生き方」なんてことにこだわっているつもりはない。
力を入れずに、自然に生きてきた。
それなのに、周りにロールモデルがない。
自分と似た感じの人が見当たらない。
親も、先輩も、友人たちもみんなそれぞれの価値観で人生を謳歌している。
だから、「これからの生活のこと、誰かに相談したいな」と思ったときに、パッと思い浮かぶ人がいないのだった。

「今を生きていると、誰かに相談って、難しいのかな」

由紀はひとりごちる。

それでも、誰かと話をして、自分の考えを進めたい。
そして、保険やお金に関しては、たとえ自分に知識が不足していても、自分なりに納得してから決めたい。
そういう気持ちが自分の中にあるのを感じる。
現代人の由紀には、「わからないことに関しては、誰かに言われた通りに進めるだけ」ということができないのだった。
「そうだ、私は現代人なんだ。今を生きよう」

由紀は腹を決めた。

そして、保険の相談に出かけた。 img

知らない人に、自分の人生に関することを話すのは、最初はちょっと緊張しそうだ。
けれども、身近な人や、自分に似た人ではなく、その相談事の専門家に話を聞いてもらう方が、今の時代らしいと思う。

「こんにちは」

窓口にいる人は、由紀に全然似ていない。
性別も年齢も、自分とは別だろう人生や生活や価値観も違うに違いない。

でも、それが良かった。
自分とは似ていない人に話を聞いてもらい、自分の考えを進め、自分なりの決定をする。
由紀は現代を生きているのだった。

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作家紹介

山崎ナオコーラ

作家。1978年福岡県生まれ。
エッセイ集に『母ではなくて、親になる』(河出書房新社)、『むしろ、考える家事』(KADOKAWA)などがある。目標は、「誰にでもわかる言葉で、誰にも書けない文章を書きたい」。

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Aging Gracefully<エイジンググレイスフリー>について

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年齢を重ねることが楽しみになる世の中へ。家庭や職場、地域で頑張るミドルエイジの女性たちの、「人生100年時代」に向けた自分らしい生き方を応援する、朝日新聞と宝島社「GLOW」による共同プロジェクトです。
2018年より、記事の発信やイベント、セミナー開催などを通じて、大人世代の女性の悩みや課題に寄り添い、解決に取り組んでいます。

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「ほけんの窓口」について

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「ほけんの窓口」は、プロと一緒に保険選びができる保険ショップです。
人生は十人十色。必要な保険だってその方の周りを取り巻く環境や、考え方によって全く変わってきます。「ほけんの窓口」では、常にお客さまの立場に立ち、言葉に込められた想いを汲み取り、お客さまに『寄り添う』ことを、社員一人ひとりが目指しています。
万が一のことが起こった場合に必要となる保険はもちろん、人生100年時代を見据えた豊かな老後のための保険まで安心してご相談いただけます。「保険って必要なの?」「いつ入るのが正解なの?」素朴な疑問でもわかりやすくおこたえします。
まずは、あなたの想いを聞かせてください。

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