法人向け自動車保険とは

法人向け自動車保険とは

法人向け自動車保険の補償内容は、個人向けの自動車保険と基本的には同じですが、個人向けとは異なる法人向け自動車保険固有の特約やサービス、保険料の仕組み等があります。

法人向けの自動車保険では、原則として契約者・記名被保険者・車両所有者がすべて同じ法人名義である必要があります。また、リース車両等業務用として常時借りている自動車も法人名義で契約することができます。

法人向け自動車保険では、個人向けの自動車保険では加入できない「お客さまを乗せて運賃をもらう」、「荷物を運んで送料をもらう」といった、車の移動で直接利益を生むタクシーやトラック等事業用の車の保険に加入することができます。

各種賠償責任保険では、基本的に自動車事故に起因する損害賠償責任を補償することができません。このため自動車に起因する損害賠償責任を補償するには、自動車保険に加入しておく必要があります。

法人向けの自動車保険の保険料は、必要経費として計上することが可能です。

法人向け自動車保険の補償内容

4つの基本補償と一般的な特約やサービスに加え、保険会社によっては法人向け自動車保険固有の特約やサービスがあります。また、自動車関連業者向け専用の自動車保険もあります。

4つの基本補償の種類と内容

補償の種類 主な補償内容と特徴
対人賠償保険 自動車事故によって相手が死傷した場合の損害賠償責任で、自賠責保険等で支払われる保険金額を超える部分を補償。治療費、精神的損害、休業損害等が支払われる。
対物賠償保険 自動車事故によって相手の自動車や財物を壊してしまった場合の損害賠償責任を補償。相手の自動車の修理費用や代車費用、建物等の修理費用や店舗の損壊等に伴う休業損害等が支払われる。
人身傷害保険 自動車事故による運転者や同乗者の死傷による損害を補償。治療費、精神的損害、逸失利益等が支払われる。なお、労働者災害補償制度から給付を受けた場合や相手から賠償金が支払われた場合等は、その額を差し引いて支払われる。
車両保険 契約している自動車の損害を補償。自動車事故や火災、盗難等で生じた修理代等(全損の場合は契約の車両保険金額)が支払われる(一般的な車両保険と補償範囲を限定して保険料を抑えるタイプの車両保険がある)。
  • ※商品や特約の概要を明示しています。詳細な補償内容については弊社までお問い合わせください。

自動車保険の主な特約・サービスと内容

特約・サービス 主な補償内容と特徴
対歩行者等傷害特約 自動車事故により、歩行中や自転車(原動機付自転車を除きます)で通行中の方を死亡させたかケガによる入院をさせた場合に、対人賠償保険では補償されない相手の方の過失分を含んだ損害額が保険金額を限度に補償される。
対人臨時費用特約 自動車事故により、他人を死亡させ、法律上の損害賠償責任を負担する場合に、弔問・葬儀参列の際の弔慰金等の臨時費用の支出に備えて、被害者1名につき所定の金額が補償される。
入院・後遺障害時における
人身傷害諸費用特約
人身傷害対象事故に伴い、事故後の生活を支えるために必要なホームヘルパー雇入費用等の費用保険金が支払われる。
弁護士費用特約 保険会社が示談交渉を行えない「もらい事故」の場合等に弁護士費用等が補償される。
※法人契約では、1台ずつ特約をつける必要がある。
新車特約 新車に次のような大きな損害が発生した時に、代替自動車の購入費用が補償される。
  • 契約の車が修理できない場合、または修理費の額が「協定保険価額(車両保険金額)」以上となる場合
  • 修理費が新車保険金額の50%(内外装・外板部品のみの損傷の場合を除きます)以上となる場合
※盗難され、発見されない場合を除く。
車両全損時復旧費用特約 契約の車が事故により損傷を受けて修理できない場合または修理費が車両保険金額以上となる場合の新たな車の購入費用等について「復旧費用限度額」を限度に保険金が支払われる。
※盗難され、発見されない場合を除く。
全損時諸費用特約 全損時の廃車費用や新車登録費用等、さまざまな費用に備えられます。契約の車が車両事故により全損となった場合や、契約の車が盗難された場合で、車両保険の保険金が支払われる時に、所定の金額が支払われる。
地震・噴火・津波「車両全損時定額払」
特約
地震・噴火またはこれらによる津波によって、契約の車が保険会社の定める基準で全損となった場合に、一定の額が地震等保険金として支払われる。
レンタカー費用特約 事故や故障で自動車が走行できない場合や盗難にあった場合等、代替車としてレンタカーを借り入れた際の費用が補償される。
ドライブレコーダーによる事故発生の
通知等に関する特約
ドライブレコーダーによる事故時の通報サービスや事故映像を活用した事故対応サービス、安全運転のサポートが提供される。
ロードアシスタンスサービス レッカー牽引・搬送、宿泊・帰宅費用、バッテリー上がり、パンク、ガス欠等のトラブルに対するサポートが提供される。大型車の場合、レッカー代は高額になるケースがあり、補償限度額を超えてしまうことがあるが、保険会社によっては拡張する特約がある。
臨時代替自動車特約 契約の車の整備・修理・点検等の間に整備工場等から臨時で借りた車の使用中の事故が補償される。
被害者救済費用特約 契約の車の欠陥・第三者による不正アクセス等により人身事故または物損事故が発生した場合で、被保険者に法律上の損害賠償責任がなかったことが確定した時に、被害者を救済するための費用が補償される。
※対人賠償保険または対物賠償保険を付帯した契約に自動セットされる。
  • ※商品や特約の概要を明示しています。詳細な補償内容については弊社までお問い合わせください。

法人向け自動車保険固有の主な特約と内容

特約 内容
企業・団体見舞費用特約 契約の車の対人事故・対物事故により負担する見舞金等の費用を補償する。
対人賠償使用人災害特約 対人賠償で補償されない「業務中の従業員を死傷させた場合」を補償する。
対物賠償非所有管理財物特約 対物賠償で補償されない「他人から借りて管理中の建物等の財物を壊してしまった場合」を補償する。
搭乗者傷害事業主費用特約 役員・使用人が死亡・後遺障害を被った場合に、事業主が臨時に負担する費用を補償する。
事業用積載動産特約 対物賠償や車両保険で補償できない、自動車に積載している商品・什器・備品等の損害を補償する。
運送業者受託貨物賠償特約 運送業者が荷主等から引き受けた貨物の損害や荷役作業に伴う対人・対物賠償を補償する。
※運送業者向け賠償責任保険との重複に注意する必要がある。
法人契約の指定運転者特約 契約時に設定した「指定運転者」(法人の代表権を持つ方)およびそのご家族について、臨時に借りた車を運転中の事故や、契約の車に搭乗中以外の自動車事故による損害について補償する。
人身傷害業務上災害不担保特約 人身傷害保険について、記名被保険者の使用人または職員が被った身体の傷害または死亡もしくは後遺障害が、業務上災害を補償する他の災害補償制度によって給付が行われるべきものである場合は、保険金を支払わないとする特約。
  • ※商品や特約の概要を明示しています。詳細な補償内容については、弊社までお問い合わせください。

ノンフリート契約とフリート契約

ノンフリート契約とフリート契約

保険料決定の仕組みは法人契約と個人契約で大きな違いはありません。自動車保険にはノンフリート契約とフリート契約があり、どちらに該当するかで保険料決定の仕組みが異なります。

「所有・使用する自動車」が9台以下の場合はノンフリート契約となり、「所有・使用する自動車」が10台以上の場合はフリート契約となります。異なる保険会社で自動車保険を契約していても各保険会社の総契約台数が10台以上であればフリート契約となります(ただし、JA共済等の共済で契約している自動車やドライバー保険は総契約台数に含みません)。

また、契約者が法人でなく個人であっても「所有・使用する自動車」が10台以上であれば、フリート契約となります。一方、社員からの借り上げ自動車等はフリート契約に含めることはできません。フリート契約にするかノンフリート契約にするかの選択はできず、「所有・使用する自動車」10台以上になれば自動的にフリート契約となります。

ノンフリート契約とフリート契約の主な特徴

ノンフリート契約
(9台以下)
フリート契約
(10台以上)
  • 1台ずつの契約と2台以上をまとめて契約するミニフリート契約がある。
  • ミニフリート契約では、台数に応じた多数割引、分割払の割増がない等の制度がある。
  • 法人のミニフリート契約では、契約者と記名被保険者は同一であることが条件。
  • 保険料は自動車1台ごとにノンフリート等級別料率が適用され、等級は事故の有無で決まる。事故による次年度の保険料の増加は事故を起こした車だけであり、無事故の車は等級が進行し割引が大きくなる。
  • 全車両を一括して契約することも、分けて契約することもできる。
  • 10台以上の自動車を1証券で契約することで割引が適用される。
  • 全車両一括契約の場合、中途取得自動車は、あらかじめ約定した条件に基づいて、取得時から補償されるため、付保漏れを防ぐことができる(毎月1回の通知と精算日にまとめて精算を行う)。
  • 契約者、記名被保険者、車両所有者が同一であることが要件となる。
  • フリート契約の割増引は一定期間の損害率に応じて決まる。全ての車に同じ割増引が適用され、事故の少ない契約者にはノンフリート契約より適用される割引率の幅が広いため高い割引率となることもある。一方、1台でも高額な賠償金が発生するような事故を起こした場合、全車両の保険料に影響するため、翌年度の保険料が大幅に高くなることもある。
  • 運転者従業員限定特約等、フリート契約特有の特約がある

ミニフリート契約

一般的にミニフリート契約とは、保険始期日時点で契約者が次の方を被保険者として1保険証券で2台以上の車をまとめて契約をすることをいい、一定の条件を満たす場合にはノンフリート多数割引が適用されます。

:契約者
:①の配偶者
:①または②の同居の親族

法人のミニフリート契約では、契約者と記名被保険者は同一であることが条件となります。
複数の自動車保険を1つにまとめることで、保険の満期管理や補償の重複等の管理がしやすくなるメリットがあります。

ノンフリート多数割引の例

契約台数 ノンフリート多数割引
2台 3%割引
3台~5台 4%割引
6台~9台 6%割引
  • ※保険会社によって、割引率が異なることがあります。

各種割引制度

割引名称 適用条件
新車割引 用途車種が自家用(普通・小型・軽四輪)乗用車で、始期日(保険期間が1年を超えるご契約の場合は、各保険年度における始期日の応当日)の属する年月が初度登録(検査)年月の翌月から起算して49か月以内の場合、保険料が割引となります。
ASV割引 下記①~③の条件をすべて満たすご契約について、保険料が割引となります。
  • ①用途車種が自家用(普通・小型・軽四輪)乗用車であること
  • ②衝突被害軽減ブレーキ(AEB)が装備されていること
  • ③ご契約のお車の型式が発売された年度(4月始まり)に3を加算した年の12月末以前に始期日(保険期間が1年を超えるご契約の場合は、各保険年度における始期日の応当日)があること
ECOカー割引(先進環境対策車割引) 始期日(保険期間が1年を超えるご契約の場合は、各保険年度における始期日の応当日)の属する年月が初度登録(検査)年月の翌月から起算して13か月以内の「ハイブリッド車」、「電気自動車・PHV」、「燃料電池車」または「CNG車(圧縮天然ガス自動車)」の場合、保険料が割引となります。
※ECOカー割引(先進環境対策車割引)と福祉車両割引の条件を共に満たす場合は、福祉車両割引を適用します。
福祉車両割引 車いす移動車や身体障害者輸送車等で一定の条件を満たす自動車の場合、保険料が割引となります。
※本割引の対象となるお車の条件については、弊社までお問い合わせください。
  • ※保険会社によって、割引適用条件が異なることがあります。

長期契約

ノンフリート契約には保険期間を3年間等に設定した長期契約があります。長期契約をすることで、毎年の更改手続き忘れや更改手続きの煩雑さがなくなります。また、一部の保険会社を除いた長期契約は、保険期間中に事故や保険料率改定があっても、契約時に定めた保険年度ごとの保険料は変わりません。

法人向け自動車保険の選び方のポイント

法人向け自動車保険の選び方のポイント

法人向け自動車保険固有の特約や事故時の通報サービス等の内容は、保険会社によって違いがあるため、補償内容と保険料を十分に比較検討することが大切です。昨今、事故時通報サービス等、ドライブレコーダーを活用した事故対応の迅速化への関心は高まっています。

複数の自動車を一台ずつ別々に保険契約すると管理も煩雑になり、さらに保険会社まで異なると補償やサービス内容にも違いが生じます。保険料だけでなく契約管理等にかかる事務面も考慮すると、法人が保有する自動車は同じ保険会社でまとめて加入するのが合理的でしょう。

キッチンカー(移動販売車)の場合

走行中の事故は自動車保険の補償対象となります。例えば、車の衝突による積載した商品や什器・備品等の損害には「事業用積載動産特約」を付けることで補償されます。
なお、パソコンやナビゲーションシステム等事業用積載動産に含まれないものもあります。

貨物運送業の場合

個人事業主として貨物軽自動車運送業を開業された場合、交通事故等により荷主から引き受けた貨物の損害を補償する必要があります。例えば、交通事故によりトランク内や正規の荷台に積載中の被保険者が荷主等から運送を引き受けた貨物に損害が発生し、荷主等に対する法律上の損害賠償責任を負った場合、「運送業者受託貨物賠償特約」を付けることで補償されます。

  • ※運送業のため使用される営業用の貨物自動車にセット可能です。

法人向けの自動車保険の注意点

  • 法人向けの自動車保険であっても、運転者の年齢条件は、その自動車を運転する最も若い人の年齢で設定します。一方、契約者が法人名義の場合、リスク細分型自動車保険の契約はできません。このため、個人名義でリスク細分型自動車保険を契約した場合と異なり、年齢条件の適用範囲、自動車の使用目的、ゴールド免許割引といった割引等は適用することができません。
  • 人身傷害保険や搭乗者傷害保険は、業務災害保険や労災総合保険等の補償と重複する可能性があるため注意が必要です。
  • フォークリフト等の構内専用車での対人・対物事故は、事業者向けの賠償責任保険でも補償の対象となる場合があるため、重複しないよう注意が必要です。
  • 通販型損害保険会社では、一部で法人向けの自動車保険も取扱っていますが、インターネット上で契約手続きができず、保険会社のコールセンターへ電話をし、契約手続きを行う必要があります。また、通販型損害保険会社では契約条件によっては、車両保険等を引受できない場合もあります。
  • 記名被保険者を個人法人間で変更する場合、原則として等級の継承やフリート契約の割増引の継承ができません。ただし、個人事業主から法人成りした場合や、法人から個人事業主へ事業形態を変更した場合等所定の条件を満たしていれば、割増引を継承できる特別な扱いがあります。

まとめ

法人向け自動車保険は、個人向け自動車保険とは別の特約やサービス等があるため、確認が必要です。また、自動車保険は「所有・使用する自動車」の合計台数が10台以上かどうかで(JA共済等の共済やドライバー保険は含みません)、ノンフリート契約かフリート契約かの契約形態が変わり、どちらの契約に該当するかで、保険料率や特約等の補償内容が変わります。

いずれにしても、自動車保険に加入する際には、補償内容や特約・自動車のトラブルサポートの必要性を十分に検討し、事業者向け賠償責任保険や業務災害保険等と補償の重複や漏れがないか確認した上で、契約することが大切です。

よくあるご質問

「所有・使用する自動車」が10台以上あってもノンフリート契約のままにしておくことはできますか。
契約期間が1年以上の自動車保険を契約されている場合は、ノンフリート契約のままにしておくことはできません。
「所有・使用する自動車」が10台以上になったら、現在のノンフリート契約をすぐにフリート契約へ変更しなければならないですか。
全車両一括特約を付帯するかどうかによって異なります。

【全車両一括特約を付帯する場合】
現在のノンフリート契約をすべて解約して、フリート契約として契約する必要があります。

【全車両一括特約を付帯しない場合】
満期日まで、現在のノンフリート契約のまま継続することも可能です。この場合は、10台到達日以降、更改する契約からフリート契約として契約します。
繁忙期のみ使用する自動車を1年未満の短期間で契約します。この契約も「総契約台数」に含まれますか。
短期契約を締結している自動車は、原則として「総契約台数」には含まれません。
「総契約台数」とは、契約期間1年以上の自動車保険を締結した「所有・使用する自動車」の合計台数をいいます。なお、全車両一括特約を付帯している場合は、繁忙期のみの短期契約を締結できないケースもありますので、ご注意ください。
  • ※JA共済等の共済で契約している自動車やドライバー保険等は「総契約台数」には含まれません。
フリート契約でテレマティクス自動車保険やドライブレコーダー付き自動車保険に加入することは可能ですか。
可能です。保険会社によっては、運行管理機能や安全運転診断等のサービスがついています。
メーカーオプションでドライブレコーダーがついている自動車の場合、保険会社から提供されたドライブレコーダーをつけなくても、ドライブレコーダーによる事故時の自動発報サービスや事故映像を活用した事故対応サービス、安全運転サポートの提供を受けることはできますか。
保険会社によって異なります。事故映像を活用した事故対応サービス、安全運転サポートの提供を受けるには、保険会社から提供されたドライブレコーダーの装着がなくても利用できる場合もあります。
ただし、ドライブレコーダーによる事故時の自動発報サービスをうけるには、保険会社から提供されたドライブレコーダーの装着が必要となります。
  • ※本文記載の特約名称や補償内容等は、保険会社によって異なることがございます。
  • ※本文記載の内容は、2023年3月現在の内容となっています。

更新日:2023年6月13日